山梨県が有機薄膜太陽電池を用いたブドウ栽培の最前線
山梨県では、世界初の試みとして「有機薄膜太陽電池」を活用したブドウ栽培の実証実験が進められています。このプロジェクトは、2023年7月22日に開始され、令和7年8月27日には現地説明会が開催されました。メインとなるのは、県が開発したオリジナル品種「サンシャインレッド」です。これにより、ブドウの着色向上を目指します。
実証実験の背景と内容
この実証実験では、ブドウ園の簡易雨よけに有機薄膜太陽電池が設置されています。この太陽電池は光を透過する素材で作られており、太陽光をブドウに直接届けることが可能です。実験の目的は、発電した電力を利用し、夜間にはLEDライトを使用してブドウを照射。これにより、ブドウの着色が改善されることが期待されています。
それまでのブドウ栽培では、果房に光を反射させる白色のマルチを使っていましたが、有機薄膜太陽電池の導入により、昼夜を問わず効率的に光を利用することができます。この技術により、より高品質で高付加価値なブドウの生産が可能になるのです。
現地説明会の様子
説明会には、山梨県知事の長崎幸太郎氏をはじめ、プロジェクトに参加している公立諏訪東京理科大学の渡邊康之教授など、約30名の関係者が出席しました。冒頭の説明では、山梨県農政部の樋田洋樹部長がプロジェクトの概要を説明し、さらに山梨県果樹試験場の石原雅広場長が栽培試験の内容を詳しく解説しました。
実験の体験として、参加者には「サンシャインレッド」の試食も行われ、その特性や風味に触れる機会が提供されました。実証実験によるブドウの着色状況についても、LED照射区と非照射区の比較が行われ、明確な成果が立証されました。
農業とエネルギーの未来
渡邊教授は、本実証により「発電」と「農業栽培」の両立を図る挑戦であり、従来の「ソーラーシェアリング」とは異なる「ソーラーマッチング」という考え方を採用していると述べました。これは、光の選択性や再現性に優れており、安全性が高いことから、農業分野での応用が大いに期待されています。
山梨県知事もこの実験の意義を強調し、取り組みを進めることで、ブドウの高付加価値化や安定した農業経営につなげていくと述べました。最終的には、ビニールハウス全体をこの技術で覆い、農業のカーボンフリーへの貢献を目指しているとのことです。
今後の展望
この実証実験は、2024年まで続けられる予定で、実用化に向けた活動が進められます。同時に、水素を活用した農業用ハウスでの加温試験など、さらなる環境に優しい農業システムの確立も目指しています。山梨県は、これらの実証を通じてカーボンフリー農業の先進県としての役割を果たし、脱炭素社会への貢献モデルを構築する計画です。