スーパーコンピュータの進化を支える技術
2023年、スーパーコンピュータ「京」と「富岳」のさらなる性能向上に寄与した新しい演算処理技術が、関東地方発明表彰において特許庁長官賞を受賞しました。この受賞は、富士通株式会社の特許である「科学技術計算を高速化する演算処理装置」の発明が評価された結果です。
地方発明表彰とは
地方発明表彰は、各地方における発明の奨励を目的に大正10年から実施されており、発明に貢献した方々が評価されます。本賞は特に進歩性に優れた発明に贈られる名誉ある賞で、全国の8つの地方から選ばれた優れた発明作品が顕彰されます。
受賞概要
受賞したのは、富士通社の本藤幹雄氏です。また、実施功績賞は代表取締役社長の時田隆仁氏に授与されました。受賞発明は、従来の数学関数に関する演算を高速化する新しいプロセッサを採用した技術です。
従来技術の課題
スーパーコンピュータでは、気象予測や航空機の流体解析など、多様な科学技術計算が行われています。これらの計算には、基本的な加減乗除の他に、三角関数や指数関数なども用いられますが、これらの数学関数の処理が複雑で、計算時間が掛かることが大きな課題となっていました。既存の技術では、CORDICや指数関数近似命令がハードウェア実装されていましたが、反復処理による遅延や必要な演算精度に満たないという問題がありました。
受賞技術の革新
受賞した演算処理技術は、数学関数の処理を高速に実行するための特別なプロセッサを開発しました。この新技術により、テイラー級数展開の前処理に必要な命令数を約1/3に削減し、演算処理の高速化と精度維持が同時に実現されました。これにより、科学技術計算に必要な精度が確保され、実用化に成功しました。
産業への影響
この発明技術により、スーパーコンピュータで行われる様々なシミュレーション(自動車や航空機の流体解析、地球環境の予測など)が高速化され、高精度で実施されるようになりました。これにより、産業の発展や社会の安全性向上へと寄与しています。
特に、スーパーコンピュータ「京」に搭載された技術は、その後「富岳」でも採用され、その命令セットは世界的に広がりを見せています。さらには、2027年の提供開始を目指す次世代データセンター向け汎用プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」にも同様の技術が活用される予定です。
まとめ
富士通が開発したこの演算処理技術は、科学技術の進展に寄与する大きな可能性を秘めています。特許庁長官賞という名誉を受け、今後もさらなる革新を期待される富士通の挑戦に注目です。
詳細は
公益社団法人発明協会 地方発明表彰をご覧ください。