日本の温泉旅館が直面する危機と新たな試み
近年、温泉旅館業界が厳しい状況に置かれています。特にコロナ禍の影響により、25年の間に温泉旅館の数がほぼ半減してしまいました。若者たちの宿泊の減少が声高に叫ばれる中、業界は新たな取り組みを模索しています。そんな中で注目を集めているのが、株式会社TORECOが展開するトレーディングカード「温泉トレコ」です。
温泉旅館の減少とその背景
厚生労働省が発表したデータによると、2021年3月の時点で全国の旅館・ホテルの数は約5万軒に達しているものの、その数は36県で減少しています。特に老舗旅館には、親族経営が多く、建物が古いため後継者不足の問題や改修費の負担が重くのしかかります。こうした状況の中、2020年には全体の3割が赤字に陥っているという報告も。若者を温泉街に呼び込むための魅力的な施策が求められています。
温泉トレコの登場
「温泉トレコ」は、全国の温泉をトレーディングカードとして表現し、その魅力を伝える試みです。2023年10月1日から販売が開始され、トレーディングカードにはそれぞれの温泉の写真や泉質、効能などが掲載されています。シリアル番号が付与されていて、専用アプリを使ってコレクションが可能です。この取り組みは、温泉に実際に足を運ぶきっかけを提供することを目指しています。
TORECOのスタッフは、温泉マニアであり、近年多くの温泉が閉業していることに危機感を覚え、「温泉を守る方法はないか」という想いからこのプロジェクトを始めました。すでに130以上の温泉施設がこの取り組みに賛同し、カードを販売しています。
若者を引き寄せる成功事例
温泉トレコが開始されると、奇跡的な反響がありました。東京に住む20代の女性が、週末にバイクで温泉を巡り、60軒の温泉を制覇したという声も寄せられています。このような動きは、各温泉宿にとって新たな顧客を増やす手段となっています。ある旅館のオーナーは、「広告宣伝費を捻出するのが難しい中で、この取り組みが新たな流れを生んでいる」と語ります。
イベント情報と今後の展望
特に注目のイベントが2025年5月5日、岐阜県下呂温泉小川屋で行われる温泉トレコの販売イベントです。このイベントでは、温泉トレコの購入とアプリのダウンロードを行うことで、下呂温泉小川屋の人気サービスを体験できる特典があります。イベントを通じて若者をはじめ、多くの人々に温泉の魅力を再発見してもらう機会となることでしょう。
未来へ向けて
代表の大貫康喬氏は、週末に神社やお寺で御朱印を集めるように、温泉にも足を運んでもらえるように、この活動を日本全体に広めていきたいと考えています。温泉トレコを通じて、旅館業界が再び活気を取り戻し、歴史ある温泉が守られることを期待しています。日本の温泉文化の未来は、「温泉トレコ」にかかっているのかもしれません。