年金運用ガバナンス実態調査2024の結果
有限責任あずさ監査法人は、2024年の新たな実態調査を通して、確定給付型企業年金(DB年金)の運用について深く分析しました。この調査は、約1,400社の上場企業の年金運用を担当する実務者を対象に実施され、実に123名から有効な回答が寄せられました。調査の主な目的は、企業年金のガバナンスやモニタリング体制、外部専門家の活用状況などを把握し、現場の課題を明らかにすることにあります。
調査の背景と目的
政府の「新しい資本主義」の考え方において、企業年金が果たすアセットオーナー機能の強化が求められている中で、実際の年金運用における課題を洗い出すことが重要です。調査では、年金運用担当者がどのような状況下で働いているのか、育成や配置における問題点などを収集しました。
調査結果の概要
調査の結果、多くの企業において年金運用担当者への育成や支援が不足していることが確認されました。実際、兼務で運用に従事する担当者は依然として多く、彼らの業務負荷は大きなものとなっています。兼務者の年金運用業務への従事割合が25%以下という結果も、劣悪な環境を物語っています。
人材配置においては、適格な人材を配置する企業が多いものの、育成の面では自己努力に委ねられていることが課題として挙げられました。
今後の課題
DB年金運用に関して、今後重要になる課題は「社内での運用人材の能力向上」と「モニタリング体制の強化」です。しかし、コーポレートガバナンス・コードの改訂以来、企業のマネジメント層の姿勢にはあまり変化が見られないのが現状です。具体的な支援を増やす必要性が求められています。
利益相反の管理と見える化への警戒
運用委託先の決定において、利益相反の管理が十分でない企業が多いことも指摘されています。たった30%の企業が運用能力のみで委託先を決定しているという結果は、企業年金の受益者との利益相反についての理解が不足している証拠とも言えるでしょう。また、「見える化」に関しても、実名開示のリスクやミスリードに対する警戒感が強く、ルール整備が急務となっています。
最後に
年金運用ガバナンスに関する調査は、あずさ監査法人が提供する貴重なデータであり、この情報を元に企業は自身の運用体制を見直し、従業員やその家族に持続可能な年金を提供するための改善に努める必要があります。地道な努力が実を結ぶ日を心より願っています。
出典:
- - 有限責任あずさ監査法人「年金運用ガバナンスに関する実態調査2024」