株式会社Smoltが目指す新たなイクラ生産体制
株式会社Smolt(本社:宮崎県宮崎市、代表取締役:上野賢)は、急激な秋鮭回帰数の減少とイクラ価格の高騰を受けて、養殖サクラマスの100%メス生産体制を実現し、イクラ生産の本格化を目指しています。本来、イクラは秋鮭から得られるもので、回帰数が減少する中での持続可能な供給体制の構築が急務となっています。
少なくなる秋鮭と高騰するイクラ価格
2025年の秋鮭回帰数は、約1,141万匹と予測され、これは平成以降で最低の数値です。過去20年間と比較すると、なんと5分の1にまで減少しています。また、主要な生産地である北海道では、2024年の不漁により、水揚げが前年の約3割にとどまりました。この影響で、札幌市の卸売市場において生筋子1キロの価格は、2010年の約2,058円から2025年には9,183円にまで高騰しています。小売店での筋子の価格も前年比で約2倍に上昇し、観光地でのイクラ丼も1,000円以上の値上がりという深刻な状況に直面しています。
この問題の背景には、海水温上昇などの気候変動が影響しており、秋鮭の回遊環境が変化したことが挙げられます。これに伴い、持続可能な生産手法の確立が求められています。
100%メス生産体制の利点
Smoltは、養殖サクラマスの100%メス生産技術を確立することで、効率的なイクラ生産体制を構築することを目指しています。
生産効率の向上
全ての個体からイクラを収穫できるため、生産効率が大幅に向上します。
品質管理の簡素化
雌のみの生産により、品質が均一化し、管理が容易です。
計画的供給
需要に応じた安定的な供給が可能となります。
この新しい生産技術は、2021年度の「STI for SDGs」アワードで科学技術振興機構理事長賞を受賞した背景があります。これを基に、温暖化に強い魚を選抜し、安定した魚卵生産を実現してきました。
持続可能な生産と今後の展望
Smoltの完全養殖技術により、天然資源に依存せず、トレーサビリティが確立された安定したイクラ供給が実現します。生産履歴の完全管理を通じて、品質の高い卵が生産される環境が整い、天然の秋鮭の回帰数に左右されない価格安定性が期待されます。
今後の展望として、Smoltは全雌生産体制の確立を進め、全国的に新しい養殖拠点を作ることで、イクラ市場の安定化に貢献していく考えです。また、この取り組みにより、国内のみならず、国際的にも競争力のある養殖業の確立を目指します。養殖技術の普及が新たな雇用創出や地域活性化に寄与することを期待しています。