「能力の生きづらさ」を読み解く新たな一冊
昨今の社会は、ますます能力主義の風潮が強まっています。この考え方は、多くの人々にとって生きる上での息苦しさや、他者との関係性に影響を及ぼしています。そんな現状を打破すべく、ガン闘病中の著者、勅使川原真衣氏が新著『「能力」の生きづらさをほぐす』を発表しました。彼女は、企業や学校、病院など様々な場面で人との関係構築に取り組む組織開発の専門家で、今回は自身の体験を元に書かれています。
著者の背景
著者である勅使川原真衣は、1982年に横浜で誕生し、慶應義塾大学と東京大学で学びました。外資系コンサルタント会社に勤務した後、2017年には自らおのみず株式会社を設立し、組織開発に従事。二児の母でもある彼女は、2020年から乳癌と闘っています。今回の著書は、その体験を通して、人々に「他者と生きる知恵」を伝えるために書かれたものです。
本書の内容
本書は15年後の2037年を舞台にしています。評価が急降下した上司によって病床にいる息子を助けるため、亡き母が訪れるという設定です。彼女は子どもたちと対話を重ねる中で、人間関係の持つ意味や能力主義社会がもたらす課題を掘り下げていきます。以下のような章立てで構成されており、各話が彼女自身の考えや体験とともに語られます。
- - はじめに
- - プロローグ: 僕は能力がないのか?
- - 能力の乱高下
- - 教育社会学の極地: 能力の化けの皮が剥がれる瞬間
- - 不穏な「求める能力」: 社会が定める能力とは
- - など
社会への提言
著者は、能力の評価が外部の影響を受けやすいことを指摘しています。職場では「優秀」とされる一方で、かつての職場では「使えない」と評価される現象があることは、多くの人が経験しうるものです。また、企業が求めるスキルが学校のカリキュラムに影響を及ぼし、教育制度が柔軟さを欠く悩みも浮き彫りにされています。
読者へのメッセージ
勅使川原氏は、社会が個々の能力を過度に求める風潮が、逆にそれを発揮できない人々を生み出していると警鐘を鳴らします。また、この現象がメンタルヘルスに及ぼす影響についても触れ、成功を手にするために個人が能力を伸ばすことだけでは解決しないことを示唆します。著書には、彼女の闘病生活を通じて見えてきた真実が詰まっており、今後の社会における「能力」の新たな捉え方を提示しています。
本書を手に取る意味
『「能力」の生きづらさをほぐす』は、今日の社会に生きる人々にとって、己の能力や生き方を再考させる貴重な一冊です。生きづらさを感じているとき、他者との関係をどう構築していくのか、その方法を著者の経験から学び取ることができるでしょう。
ぜひ、書店やオンラインストアで手に取ってみてください。