森林保全の新知見
2024-12-06 00:03:21

防鹿柵による森林生態系の保全とシカ対策の新たな知見

近年、全国的にニホンジカの個体数が増加していますが、その影響は森林生態系に大きな変化をもたらしています。特に、強度なシカの採食は下層植生の減少を引き起こし、これにより土壌の侵食が加速されています。最近の研究では、これらの現象が樹木衰退や土壌微生物の多様性の減少など、様々な生物群集に悪影響を及ぼすことが明らかになってきました。

こうした問題に対処するため、各地で防鹿柵の設置が進められていますが、これが下層植生以外の生物群集の保全にどれほど役立つのかについては、まだ情報が不足していました。そこで、九州大学、宮崎大学、岡山大学からなる研究グループが、熊本県の白髪岳に設置された防鹿柵の内外で、ブナの成長と土壌微生物相についての調査を実施しました。

この研究では、ブナの成長量を年輪解析を用いて評価しました。柵外のブナは、シカの採食が激化するにつれて成長が低下していましたが、柵内のブナはそのような成長の低下が見られませんでした。この結果は、防鹿柵がシカの採食からブナを守る効果があることを示しています。

さらに、土壌微生物相についても環境DNAの分析により比較が行われました。その結果、柵内の土壌には真菌類など一部の微生物群の多様性が高い状態にあることが確認されました。これは、防鹿柵が下層植生を保護することにより、土壌の物理化学特性の変化を抑制し、結果としてブナの成長に寄与していることを示しています。

特に注目すべきは、防鹿柵の設置がただ下層植生を守るだけではなく、森林全体の健康を保つためにも重要な手段であることが確認された点です。シカの過採食から生態系を守ることは、人間社会にとっても利益となり、自然環境の保全に貢献します。

この研究の成果は、2024年11月1日付けで国際学術誌「Journal of Environment Management」に、土壌微生物相に関する研究成果は2024年5月30日に「Forest Ecology and Management」に掲載される予定です。これにより、防鹿柵の運用が今後の森林管理や生物多様性の保全において重要な役割を果たすことが期待されています。

研究者は、この白髪岳が地域住民にとって愛されている場所であり、そこに設置された防鹿柵が地域の生物多様性さらには自然環境を守る上でどれほど重要かを強調しています。これからも、シカの採食が森林生態系に与える影響を理解し、保全対策についての研究を進めることが求められています。

この知見は、今後のシカ採食への対策の検討に寄与していくことでしょう。


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