ココナッツオイルから新たな航空燃料が誕生
日本グリーン電力開発株式会社が、食用に適さない規格外ココナッツから100%バイオマス由来の航空燃料「ニートSAF」の製造に成功したというニュースが舞い込んできました。このニュースは航空業界だけでなく、環境問題に関心を寄せる全ての人々にとって驚くべき内容であり、これからの持続可能な未来に向けた重要なステップを示唆しています。
バイオマス由来SAFの重要性
2022年時点、世界のSAF(Sustainable Aviation Fuel)供給量は、全体のジェット燃料供給量に対して0.1%程度に過ぎません。持続可能な航空燃料の量産と普及は非常に急務です。この中で、年間7000万トンから1億トンものココナッツが生産され、その30%が未成熟もしくは芽が出てしまうために規格外とされています。これをSAF原料として再利用できる可能性が期待されていました。
成功の背景と技術の特徴
今回の成功は、NEDO事業の一環として行われた「低圧・低水素消費型の多機能触媒利用」に基づいています。日本グリーン電力開発は、インドネシアにおいて規格外ココナッツを選別し、そのオイルを絞るところからスタートしました。これにより抽出されたオイルは、バイオ燃料製造に適した分子構造を持っており、従来の航空燃料により近い特性を有しています。
多機能触媒の利用により、このプロセスは非常に省エネルギーで進められ、水素消費量も抑えつつ高品質のニートSAFを製造することが可能に。さらに、製造したニートSAFは国際的な品質規格「ASTM D7566 Annex A2」にも適合することが確認され、その品質の高さが証明されました。
具体的な製造プロセス
規格外ココナッツからオイルを抽出し、特殊な触媒を用いることで、多段階の化学反応を経てニートSAFが生成されます。この際、炭素の鎖長が他のSAF原料よりも航空燃料に近いことが、少ない反応と水素消費の実現に寄与しています。成功したニートSAFの量産に向けて、さらなるスケールアップが期待されています。
今後の展開
顧客やパートナーシップの構築が進む中、SAF原料として必要なCORSIA認証ポジティブリスト登録も完了しました。また、温室効果ガス(GHG)削減に関する標準値の策定も進められており、環境への配慮が強まっています。インドネシア政府からも地域経済活性化の観点で支援を受けており、原料収集の視点からもプロジェクトが強化されています。
結論
日本グリーン電力開発の取り組みは、航空業界の持続可能性に向けて大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。規格外ココナッツオイルから製造されたニートSAFは、生産効率やコスト、環境への影響を考慮した理想的な解決策として期待されています。これからもさらなる研究と開発が進めば、持続可能な未来に向けた新たな選択肢が広がることでしょう。