東京大学と八ヶ岳の工務店が手を組む建築AIプランナーの革新

東京大学発スタートアップと八ヶ岳工務店の協業

新たな建築の未来を切り開くプロジェクトが始まりました。東京大学の松尾・岩澤研究室からスピンオフしたスタートアップ、ARCRA株式会社が、山梨県北杜市に本社を構える素朴屋株式会社とタッグを組み、AI技術を活用した「建築AIプランナー」の開発を進めています。このプロジェクトは、従来の工務店の工程管理の課題解決を目指すもので、人手不足や技術の継承問題に対応した新しい仕組みの構築を目指しています。

背景と重要性

素朴屋は、熟練の職人の存在とその技術を守りながら、地域の独自性を生かした建築を提供してきました。しかし、現場の工程管理は「段取り八分」と言われるように、監督の経験や勘に依存する部分が大きく、作業の質を保つためには多くの努力が必要です。さらに、建築業界は人手不足に直面しており、特に若手の育成が急務となっています。これに対処するため、ARCRAと協力することで、見える化と効率化を図る狙いがあります。

プロジェクトの概要

初期ステップ（2025年〜2026年初頭）

「建築AIプランナー」では、過去の工程表や施工記録をAIに学習させ、最適な工程を提案する仕組みを構築します。試作版は2026年1月に稼働予定です。これにより、遅延リスクを事前に予測し、顧客体験を向上させることが期待されています。

今後の展望

1. 工程管理AI: プロジェクト進行の安定を図るため、遅延リスクを予測します。
2. 顧客体験AI: 施工の進捗状況をリアルタイムで共有し、顧客満足度を向上させます。
3. 見積AI: 材料特性と工数を学習し、迅速かつ正確な見積もりを可能にします。
4. 設計支援AI: 技術継承を支援する役割も果たします。

将来的には、BIMと融合した建築DXの形を構築し、設計から施工までをスムーズに進めることを目指しています。

役割分担

- ARCRAは、AIアルゴリズムの開発やデータ解析、システム実装を担い、建築業界全体の仕組み化に寄与します。
- 素朴屋は、現場データや施工ノウハウを提供し、日本の建築文化を未来に残すための技術を発信します。

今後のスケジュール

- 2026年春には建築AIプランナーの試作版を公開し、デモイベントを開催予定です。
- 同年内には見積AIの開発を始め、現場での実証実験が行われる予定です。
- 2027年以降には、成果を基に全国の工務店や自治体との連携を推進していきます。

ARCRAの代表取締役である藤本秦平氏は、「BIMが設計主導の革新なら、私たちが取り組むのは現場主導の革新です。」と語っています。さらに、素朴屋の今井久志氏は「飛鳥時代の知恵を大切にし、伝統と革新を融合させることが次の世代への継承につながる」と述べています。

このプロジェクトは、伝統的な建築技術を未来へ残すための重要な一歩です。日本の美しさを再確認し、自然な素材での建築を通じて、地域の特性を生かした新しい価値を創造し続けることでしょう。