DHL Expressとキャセイグループの新たなSAF契約
2025年8月13日、香港およびシンガポール—国際的な航空貨物輸送が新たな一歩を踏み出しました。DHL Expressとキャセイグループの間で、持続可能な航空燃料(SAF)の活用を拡大するための契約が締結されたのです。これにより、キャセイはDHL Expressに対し、成田国際空港、仁川国際空港、チャンギ国際空港から発信される国際便向けに、合計2,400メトリックトンのSAFを供給します。
この便は、キャセイの貨物航空会社であるエアホンコンによって運航され、DHL Expressの国際エクスプレス輸送を担っています。この新たな契約は、2025年までの期限があり、温室効果ガスの排出量を約7,190メトリックトン削減することが見込まれています。この数値は、エアバス330F型機を使用した香港とシンガポール間のフライトが100回分に相当し、環境への大きな負担軽減に寄与します。
DHL Expressのアジア太平洋地区担当、Peter Bardens氏は、「現状で世界の航空燃料消費に占めるSAFの割合は1%未満ですが、航空輸送は依然として温室効果ガスの主要発生源です。この連携を通じてアジアにおけるSAF利用の拡大を進め、サステナブルな物流の構築に寄与することが期待されます」と語ります。
この契約は長年にわたり築かれてきたDHL Expressとキャセイグループとのパートナーシップの延長にあたります。エアホンコンは20年以上にわたり、DHL Expressのアジア太平洋地区でのネットワーク運営において重要な役割を果たしてきた実績があります。今回の提携は、SAF推進における新たな協力の道を開くものとなります。
キャセイのカーゴ部門ディレクター、Tom Owen氏は「今回のSAF利用はエアホンコンの運航便で初めてであり、グローバルネットワークでのSAF活用の拡大への重要な一歩です。SAFは私たちの脱炭素化戦略の中心にあり、同じ志を持つDHL Expressとの連携により、アジアにおける利用を推進することができ、大変嬉しく思います」との見解を示しています。
この新たな提携にあたり、DHL Expressはキャセイが2022年に開始した「法人企業向けSAFプログラム」の戦略的パートナーとしても参加しました。このプログラムは、航空貨物輸送のCO2削減を支援するために企業パートナーが参加するもので、2024年には過去最多の16社が参加し、6,000トン以上のSAFが使用される見込みです。
キャセイはアジア地域でのSAF供給ネットワークを拡大中です。2025年初頭には、中国のシノペックと提携し、中国本土で生産されたSAFを香港国際空港にて積み込み、初となる香港への輸出を実現します。また、韓国ではSKエナジー社との間で2025年から2027年までのSAF供給契約も締結しています。こうした取り組みは、キャセイが自社のネットワークにおけるSAF利用を広げ、地域のSAFエコシステムを育成するためのものです。
SAFの安定的な供給には長期的な投資が不可欠です。DHL Expressはこれまでに、Nesteやbp、ワールドエナジー社と長期契約を結び、SAFの導入を進めてきました。2025年には、コスモ石油マーケティングとの提携を通じて、日本国内でのSAF供給を計画しており、シンガポール・チャンギ国際空港からの国際便にはNesteから7,400メトリックトンのSAFを調達する契約も結びました。
これらの取り組みは、DHLグループが「Strategy 2030」に掲げる「新エネルギー」戦略にも直接関係しています。代替燃料の輸送に関するノウハウを蓄積し、風力、太陽光、電気自動車(EV)とバッテリー、蓄電システムなどの領域で、エンド・ツー・エンドの物流ソリューションを開発することに取り組んでいます。
DHL Expressとキャセイグループの新たなSAFパートナーシップは、持続可能な未来に向けた大きな一歩として、多くの期待を寄せられています。