5社共同で実施されるGPU計算力リモート提供の実証実験とは?
近年、製薬・創薬業界ではAI技術が重要な役割を果たすようになり、その影響は計り知れません。これを受けて、三菱商事、NTT、NTTコミュニケーションズ、モルゲンロット、アイパークインスティチュートの5社は共同で、湘南ヘルスイノベーションパークとMCデジタル・リアルティが運営するデータセンターにて、GPU計算力のリモート提供に関する実証実験を始めました。
この実証実験の背景には、医薬品の研究開発に要するコストや時間を削減し、AI技術を活用した新たな医薬品の創造を効率化するというニーズがあります。しかし、AI創薬を実現するためには、インフラ整備や研究データのセキュリティ対策といった課題が存在していました。そこで、NTTのIOWN APN技術およびモルゲンロットの仮想化技術を活用し、複数の企業が同時に快適で安全なAI分析を行える環境を構築します。
1. 実証実験の目的と背景
AIを使用した創薬プロセスの推進において、様々なデータを多角的に解析することが求められています。従来、医薬品は多くの試行錯誤を経て開発されていましたが、AIの活用により、化合物の生成や病気に対するアプローチが変わりつつあります。それに伴うAI技術の進化は、製薬業界に変革をもたらします。
しかし、データのアップロードやダウンロードにかかる所要時間、またセキュリティに関する懸念は依然として大きな課題です。この実証実験では、データセンターと研究開発拠点をNTTの高速回線でつなぎ、データの迅速な転送を実現します。また、プライベートクラウド環境を整備することで、データの安全な取り扱いが可能となります。
2. 実証内容と期待される成果
この共同実証実験では、湘南アイパークの企業が遠隔でGPU計算力を利用できる環境が整備されます。これにより、遅延やフレームロスのないスムーズな計算処理を行えることが期待されています。さらに、AIプロセス特有の多様なワークロードに適応した分析基盤が構築され、各企業にとっての業務効率化や経済性に寄与することが目指されます。
特に重要なのは、セキュリティ要求を満たしつつ、コンフィデンシャルコンピューティングを利用した分析環境を確立することです。これにより、AIを駆使した創薬や患者ケアの向上が奨励され、結果的に日本の産業競争力を強化するモデルが実現するでしょう。
3. 参加企業の役割
共同実証実験に参加する各社は、それぞれ特有の技術や知見を基に貢献します。三菱商事は高性能なNVIDIA GPUを導入し、AIソリューションの全体的な強化を図ります。NTTとNTT ComはIOWN技術を駆使し、ネットワークの安定性を確保します。モルゲンロットは仮想化技術を用いて、GPUを複数の企業で共有できる環境を構築。そして、アイパークインスティチュートは全体の施設とエコシステムの整備をサポートします。最後にMCDRは高効率なデータセンターを提供し、堅牢なインフラを支えます。
4. 今後の展望
この実証を通じて、新たなAI分析基盤の実現や耐量子セキュリティの確認が進められます。将来的には、様々な産業分野でのAI活用の拡大にも寄与し、社会的課題の解決に繋がることが期待されます。
この共同実証実験は、医療業界に限らず、AI技術によるイノベーションの波を広げる可能性を持っています。今後の展開に対する期待が高まる中、これらの取り組みが日本の競争力向上に寄与することへの期待も大きいと言えるでしょう。