「がんと折り合いをつけて生きる」:元医師の闘病記が示す、新たな生き方
岩手県宮古市元市長で医師でもある熊坂義裕氏の手記『がんと折り合いをつけて生きる』が、2024年11月14日に発売されました。本書は、熊坂氏自身のステージⅣの前立腺がんとの闘いを赤裸々に綴った闘病記であり、同時に、がん患者と社会がどのように共存していくべきかという問いかけを投げかける一冊です。
ステージⅣ前立腺がんと向き合った医師の決意
2023年、前立腺がんステージⅣと診断された熊坂氏。医師としてのキャリアに終止符を打ち、治療に専念することを決意します。本書では、内分泌療法やロボット手術など、自身が受けた治療の詳細を克明に記し、がん治療に関する最新の知識や情報を提供しています。単なる闘病記にとどまらず、医療従事者としての視点も交えた客観的な記述が、読者に信頼感を与えます。
専門家との鼎談:がんと折り合いをつけるヒント
本書の見どころの一つは、熊坂氏と、がんサバイバーシップの第一人者である高橋都医師、そしてがん検診の推進に尽力する村上晶彦医師との鼎談です。熊坂氏の妻である伸子さんも参加し、がん患者として、そして支える側として、それぞれの立場からの率直な意見が交わされています。
鼎談では、「がんになっても働き続けられるのか」「がんになっても笑って暮らせるのか」といった、多くの患者が抱える疑問に正面から向き合います。治療法や社会制度だけでなく、心の持ち方、家族や友人とのコミュニケーションなど、多角的な視点から「がんと折り合いをつけて生きる」ためのヒントが提示されています。
社会全体で支える、新たながんとの付き合い方
本書が提案するのは、がん患者を社会全体で支えるという考え方です。がんになった本人だけでなく、家族、職場、地域社会全体が、どのように理解し、サポートしていくべきかを問いかけています。特に、日本の現状では、がん患者とその周囲がどのように折り合いをつけて生活していくべきかという明確な指針が不足している現状を指摘し、本書がその解決策を示唆しています。
熊坂氏の経験と、専門家たちの知見を融合させた本書は、がん患者自身はもちろん、その家族、友人、医療関係者、そして社会全体にとって、極めて有益な一冊と言えるでしょう。
著者のプロフィール
熊坂義裕:医師・医学博士、一般社団法人社会的包括サポートセンター代表理事
高橋都:医師・博士(保健学)、NPO法人日本がんサバイバーシップ代表理事
村上晶彦:医師・医学博士、公益財団法人岩手県対がん協会専務理事
熊坂伸子:博士(経営学)、ブックカフェ「ことの葉」オーナー
書籍概要
書名: がんと折り合いをつけて生きる
発売日: 2024年11月14日
定価: 1540円(税込み)
体裁: 四六判280ページ
ISBN: 978-4-87201-858-5
発行所: 株式会社岩手日報社(岩手県盛岡市内丸3-7)
ウェブサイト: 「岩手日報社の本」: https://books.iwate-np.co.jp/
試し読み: https://iwate-np.tameshiyo.me/9784872018585