【IL DESIGN】デンマークデザインイベント「3daysofdesign」参加レポート&ブランド新情報<後編> - オッドフェローパレス最上階からの眺めと新進気鋭のブランドたち
デンマークのデザインイベント「3daysofdesign」に参加したレポートの後編をお届けします。前編では、伝統的なデンマークデザインの魅力を紹介しましたが、後編では、新たに台頭してきた「手頃な価格」のデニッシュデザインや、環境問題への意識の高まりを感じた様子をお伝えします。
6月13日(木) イベント2日目:オッドフェローパレス
イベント2日目は、ロココ様式の豪華な邸宅「オッドフェローパレス」で開催されました。
最初に訪れたのは、Bent Hansen(ベントハンセン)の展示です。LYFA(リーファ)の照明とコラボしたレイアウトは、邸宅の雰囲気にぴったりとマッチしていました。担当の方から、チェアの裏面のファブリックの張地の丁寧な縫製について説明を受けました。
螺旋階段を上がると、Ox Denmarq(オックス・デンマーク)の展示に出会いました。滑らかなフレームと本革のラウンジチェア、窓辺の光の中に佇むビロードの張地のチェアなど、クラシックな風合いが魅力的でした。
次のフロアでは、IL DESIGNが直接取引をしているMan of Parts(マン・オブ・パーツ)を訪問しました。麻布台ヒルズにお住まいの顧客からご注文いただいた作品と同じものが展示されており、まさに宮廷の一室といったレイアウトが施されていました。Director of Salesの方と直接顔合わせし、納期の確認などを行いました。
そして、ついに最上階へ。コペンハーゲンの街並みが、高いビルの無いおかげで立体的に広がり、童話の一ページのような景色が広がっていました。18世紀後半に建てられたというこの邸宅から、貴族たちが港町の風を浴びながらワインを傾けていた光景が目に浮かびます。
6月13日(木) イベント2日目:照明とアウトドア家具
階下では、照明を中心とした展示が広がっていました。チェコ共和国のBROKIS(ブロッキス)の乳白色とオリーブ色のペンダント照明「Star Cloud」は、非常に可愛らしく夢のある作品でした。
隣にはmoooi(モーイ)の展示がありました。鳥の形をした照明「Perch Light Branch」や、太いロープを組んだようなラウンジチェアなど、相変わらずの尖った感覚が光っていました。
邸宅の前庭には、様々なアウトドアファニチャーが並んでいました。中でも、スウェーデンのアウトドアメーカーGrythyttan Stalmobler(グリチタン・スタルモブラー)のリクライニングチェア「SUNLOUNGER」は、座り心地が抜群で、安定感のある形と木目の座面が魅力的でした。
6月13日(木) イベント2日目:フィンランドのデザインと高級家具
オッドフェローパレスを出ると、woodnotes(ウッドノーツ)、Nikari(ニカリ)、Secto Design(セクトデザイン)の3つのフィンランドメーカーがコラボレーションした展示会場がありました。木の素材を活かしたテイストは、日本の家庭にも合いそうです。
さらに、最高級家具を揃えたLANGE PRODUCTION(ランゲプロダクション)のショールームを発見しました。LANGE PRODUCTIONは、Fabricius & Kastholm(ファブリシャス&カストホルム)デザインの有名なFK 87 Grasshopper Chairの全ラインの復刻をはじめとして、伝統的なオリジナルデザインを尊重しながら、新たなコレクションを創り出しているメーカーです。
6月13日(木) イベント2日目:ヴィンテージ家具とサステナブルデザイン
ニューハウン方面に戻りながら、いくつかの展示場を見て回りました。各ブランドでいただいたトートバッグのコレクションが、両手にずっしりくるほどに増えていました。各展示会場で配られるトートバッグのデザインや質感は、それぞれのメーカーの個性が溢れ、クオリティも高いので、展示を見る上での楽しみの一つです。
ヴィンテージファニチャーを扱うお店KLASSIK(クラシック)も訪問しました。広いスペースに、Fritz Hansen、Finn Juhl、PP mobler、Fredericia、CH&S、J.L.mollersなど、有名家具がずらりと並んでいました。
mater(メーター)は、徹底した個性を表現していました。Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)デザインの新作「ALDER」(アルダー)は、自然に溶け込むような色と形状・質感で、コーヒーや木材の廃棄物を混ぜた生分解性プラスチックで作られているそうです。使用済み電子廃棄物から作られているというOcean Chair(オーシャン・チェア)の新しいカラー「burnt red」も凛とした佇まいで展示されていました。会場全体が自然との共存、持続可能性を骨子としている、materの使命を体現するかのようなインスタレーションでした。
6月13日(木) イベント2日目:Fredericiaショールームと屋上からの眺め
この日の最後は、Fredericia(フレデリシア)のショールームを訪れました。階段の踊り場のTrinidad Chair(トリニダードチェア)がレンガ色の街並みを眺め、ヴィンテージのMogensen Sofa(モーエンセンソファ)が出迎えてくれました。来場者たちは、それぞれの名作に思い思いに座り、カフェタイムを楽しみながら、Fredericiaの歴史を感じていました。
屋上のテラスには、フルリサイクルの樹脂を使用したPato series(パトシリーズ)のアウトドアチェアが並び、Bergs Potter(バーグスポッター)の陶器のローテーブルが味のある質感を醸し出していました。そして、屋上からの眺めは、Scandinavian Livingのオンラインライブセミナーで画面越しに見ていたコペンハーゲンの街並みを、実際に目の前で眺めることができ、感動しました。
6月14日(金) イベント最終日:街歩きとFredericia
イベント最終日。ストロイエを通って街の中心へ向かうのも今日が最後かと思うと、感慨深いものがありました。コペンハーゲンの石畳の道や広場には多くのベンチがあり、人々は思い思いに休んでいました。ゴミ箱も多く設置されており、街がきちんと整備されているのも素晴らしいと感じました。
再びFredericiaショールームを訪れました。廃棄テキスタイルを組み合わせてデザインパターンを作り、製品のテキスタイルとして再活用することに特化したSheworks Atelier(シーワークス・アトリエ)とタッグを組んで作られた生地「Ribbon」を使用したThe Soborg Chairを観ることができました。Scandinavian Livingで開催されたFredericiaのセミナーで写真だけは拝見していましたが、実際に素材の繊細で精巧な縫製を見ることができて良かったです。
6月14日(金) イベント最終日:J.L.mollersと職人技
J.L.mollersを再訪しました。全モデルが展示されている特別な機会に、改めて一つ一つの作品を丁寧に拝見し、撮影させていただきました。1961年に建設された時と同じ工場で生産を続けているというJ.L.mollersは、工場の一部と職人を展示会に連れてきて、ペーパーコードの張りの技術を実演してくれました。
J.L.mollersのペーパーコードの張り方は、「平編み」や「鹿の子編み」などと呼ばれています。職人の方は、フレームの内側に打たれた釘にコードを引っ掛けていくように、規則的で正確なリズムで張りを進めていきます。時折コードを整える様子を見ていると、時間を忘れてしまいそうでした。
6月14日(金) イベント最終日:UMAGEと「affordable but danish design」
その後は、ニューハウンに近い運河沿いのショールーム、UMAGE(ウメイ)を訪ねました。「努力」という意味のデンマーク語を冠するUMAGEは、北欧のデザインの伝統にインスパイアされたデザインでありつつも、機能的で誰にでも手の届く「affordable」なモノづくりをコンセプトに、2008年に生まれたブランドです。
UMAGEの家具と照明デザインのほとんどに「柔軟性」があり、組み立て変えられるソファや拡張機能で形を変えられるランプ、カバーを簡単に替えることができるラウンジチェアなど、自分達の生活スタイルに合わせられる楽しさと豊かな機能性が感じられます。
6月14日(金) イベント最終日:UMAGEの家具と運河ツアー
UMAGEの家具と照明デザインのほとんどに「柔軟性」があり、組み立て変えられるソファや拡張機能で形を変えられるランプ、カバーを簡単に替えることができるラウンジチェアなど、自分達の生活スタイルに合わせられる楽しさと豊かな機能性が感じられます。
UMAGEからのご招待で、運河ツアーに参加しました。コペンハーゲンの港沿いに並ぶ歴史的な建築物を眺めながらのボートでのクルーズです。1時間の海の旅で、またこの街を違った角度から楽しむことができました。
まとめ:伝統と革新、そして持続可能性
7月11日付けのオフィシャルニュースレターによると、直接参加とバーチャル参加を含め、125か国から10万人を超える人々が参加されたという「3daysofdesign」。
伝統的な「Danish classic」の揺るがない価値と、その一方で次々と生まれてきている、新しく軽やかな「affordable」なムーヴメント。ともに、デンマーク家具、北欧デザインの魅力を感じさせてくれました。そしてイベントが街の中で行われることで、建物・空間・景色の中に配される、「暮らしの中に一緒に息づいている」家具の魅力を体験できました。
今回のレポートが、皆様の生活を楽しむ為の一つのきっかけ、ヒントになれば幸いです。お読みいただき、ありがとうございました。