著者の内田拓海さんが書いた『不登校クエスト』は、近年注目される不登校の視点から自分の学びと生き方を模索する道を描いた一冊です。六歳の頃、著者は自分の意思で「学校には行かない」と決断し、その後の九年間はホームスクーラーとして生活を続けました。この経験が、彼の作曲家としての道筋を後押ししたのです。
彼は中学時代、描く想像力を活かして日々を送っていました。一方で、社会との接点が少ない中で混乱や孤独感を抱えながらも、彼には心の中で「何かをしたい」という強い意志がありました。ある日、音楽的な情熱が燃え上がり、通信制の高校に進学することを決意し、高校二年生からピアノのレッスンを始めたのです。そんな彼の努力は実を結び、東京藝術大学音楽学部作曲科への合格を果たしました。
この成功を果たした背景には、彼自身が経験を通じて育んできた「自分で学ぶ力」が重要な役割を果たしています。彼は小学校から中学校の間に、「学校に行かない」と決めた理由や、友人が少ない中での孤独、自己を奮い立たせるために考えてきたことを本書の中で振り返ります。楽しみや好奇心を持ち、自ら選んだ経験が彼を育てたのです。
また、彼は高校生活の中で初めて社会の一員としての経験を得て、音楽の世界でも多様な人々と出会うことができました。更に、音楽家としての道を志す中で直面した数々の挑戦や挫折をも、貴重な学びと捉えています。特に、藝大入試に向けての準備や実技試験に対する心構えは、今後音楽の道を歩む若者たちにとっての指針となる部分です。
本書は、「不登校」という言葉にネガティブなイメージを持つ自分から脱却し、むしろそれを強みと捉える視点を提供します。「学校に行くことが全てではない」と、自らの道を切り開く勇気を与える内容は、多くの読者にとって共感を呼ぶでしょう。
最終章では、著者が作曲家として具体的な活動を始める過程と、その中で得られた知見について語ります。アートを通じて他者との関係を築き、より豊かな生活を送るためには自分自身が何を大切にし、どう生きるかを問いかけているように感じられます。
『不登校クエスト』は、単なる学びからの逸脱を描いた作品にとどまらず、教育のあり方や人間としての生き方を再考するヒントが詰まった貴重な一冊です。教育評論家の尾木直樹さんや脳科学者の茂木健一郎さんも絶賛するこの書籍は、現在進行形で生きる不登校の子どもたちや、その家族、教育者にとっての新たなバイブルとなるでしょう。