加賀象嵌の華麗なる世界
金沢市に位置する金沢21世紀美術館で、2023年11月20日から24日までの5日間、「加賀金工の華-美しき加賀象嵌の世界-」という展覧会が開催されました。この展覧会は、石川県の伝統工芸である加賀象嵌を広く紹介するもので、公益財団法人宗桂会が主催し、設立30周年を記念した大規模な作品展です。
展示される作品には、宗桂会が30年にわたって集めた貴重な作品や資料が並び、約100点の展示物が観覧者を魅了しました。特に、加賀象嵌の歴史を「華」、「根」、「芽」として3つの章に分けて構成したことが特徴的であり、歴史的な背景とこれまでの受け継がれてきた技術の進化をわかりやすく伝えています。
展示の中心には、山川孝次家に由来する作品が置かれ、加賀象嵌の華やかな藩政期から明治、大正時代へと続く技術の変遷が一目で理解できます。また、人間国宝を含む現代作家の作品も取り上げられ、伝統工芸の新たな可能性を示す展示となりました。
深まる加賀象嵌の理解
22日と23日には、来場者がより深く加賀象嵌の魅力を体感できるイベントも行われました。重要無形文化財「彫金」の保持者である中川衛氏によるギャラリートークでは、実際の道具や制作見本に触れながら、加賀象嵌の技法や歴史についての熱心な解説が行われました。
また、加賀象嵌体験教室では、金工作家の前田真知子氏と中島ゆり恵氏が教える中、参加者たちは「加賀金工の華」をテーマにしたストラップ作りに挑戦しました。デザインには桜や梅、唐草が使われ、参加者は各自の感性を生かした作品を生み出しました。体験に参加した32名は、手作りの楽しさと加賀象嵌の奥深さを実感しました。
大盛況の展覧会
短い会期ながら、約4300名がこの展覧会を訪れ、加賀象嵌の魅力を肌で感じました。多くの観覧者が「初めて加賀象嵌を知った」と語り、その美しさに圧倒された様子からは、地域の伝統文化への新たな関心の高まりを感じました。
主催者である宗桂会は、日機装の創業者・故音桂二郎の想いを受け継ぎ、加賀象嵌の保存と普及に尽力してきました。今後もこの活動を続けていく所存です。
本展覧会を支えてくださった全ての関係者の方々に感謝の意を表し、加賀象嵌の豊かな歴史とその未来への期待を込めて、次回の展覧会に向けた準備を進めてまいります。