日立とNTT Com、世界初のデータ同期技術を実現
2024年11月、株式会社日立製作所(以下、日立)とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は、ストレージ仮想化技術を駆使し、長距離におけるリアルタイムデータ同期の共同実証に成功しました。これは、600kmを超える距離でのデータ通信を可能にするものであり、災害発生時の事業継続性を大幅に向上させることが期待されています。
1. 事業背景と課題
昨今、天災の頻発とそれに伴うリスク管理への関心の高まりから、特に金融業界やインフラ事業者において、ディザスタリカバリ(DR)システムの導入が進んでいます。しかし、これらのシステムの維持には高額なコストと専門知識が要求され、企業にとって重荷となっていました。
さらに、生成AI技術の進化によりデータ処理量が急増し、データセンターの需要が高まる一方で、電力使用量の増加は環境への重大な影響を及ぼす可能性があります。そこで、環境に配慮した分散型データセンターの実現が求められています。
2. 画期的な実証実験
2.1 長距離データ同期技術の検証
日立ヴァンタラのHitachi Virtual Storage Platform One Block(以下、VSP One Block)とIOWN APNを用いることで、実証実験は行われました。今回、東京と大阪間を仮想的に600km離れた環境として設定し、VSP One Blockによるデータ同期がいかに迅速に行えるかを測定しました。その結果、日立が推奨する応答時間(20ミリ秒以内)を大幅に下回る応答時間を記録し、長距離でもデータの常時同期と即時反応が可能であることを確認しました。
2.2 災害時システム復旧の確認
次に行われたのは、災害発生時のシステム復旧の速度と効率についての評価です。実験では、メインサイトでの故障をシミュレートし、サブサイトでの自動的なシステム切り替えを検証しました。その結果、データ損失ゼロでスムーズに復旧することが確認され、災害時にも業務の継続が可能であることが立証されました。運用者の手間を減らし、コスト削減にも寄与することが期待されています。
3. 未来への展望
この成功を受け、日立とNTT Comはミッションクリティカルな業務に対応する次世代のITインフラシステムを提供する計画を進めています。また、環境に優しい分散型データセンターの実現を通じて、より持続可能な社会の構築に寄与することを目指しています。企業が直面するさまざまな課題に対して、技術を活用した解決策の提案が期待されます。
IOWNの構想は、革新的な光技術や無線技術を通じて、社会のデジタル化を支え、持続可能な未来を実現するための基盤を提供していくものです。日立とNTT Comの共同実証は、その重要な第一歩となるでしょう。