卸売業・小売業の新入社員、不安と成長意欲が交錯する現実
2024年入社の新入社員4,761人を対象にした「新入社員意識調査」から、卸売業・小売業の新入社員のリアルな姿が見えてきました。コロナ禍を経て、抜本的な変化や新たな価値創造を求められている卸売業・小売業。この変化の激しい業界で、未来を担う新入社員はどのような価値観やキャリア志向を持っているのでしょうか?
入社時の不安、他業種より高い割合
調査結果によると、入社式を迎えた際の気持ちとして「不安」と回答した割合は40.7%と、他業種と比較して6.9ポイント高くなりました。具体的には、「仕事についていけるか」「生活リズムや社会人としての考え方の習得」「社会人の基礎的なマナーの習得」「職場の環境になじめるか」「上司との関係性」など、多岐にわたる不安を抱えていることが明らかになりました。
特に、「社会人の基礎的なマナーの習得」と「職場の環境になじめるか」という不安は、他業種と比べてそれぞれ7.0ポイント、6.0ポイント高いという結果に。これは、DX推進や円安によるインバウンド需要上昇など、変化の激しい業界特有の不安と言えるでしょう。
3割が「組織を率いるリーダー」を志望、その理由とは?
将来のキャリアにおいては、「組織を率いるリーダーとなり、マネジメントを行いたい」と回答した新入社員が30.2%と、他業種より6.5ポイント高いという結果に。なぜ管理職を目指したいのかという理由として、「人を束ねて大きな仕事をしてみたいから」が37.4%とトップに。また、「将来経営層として会社を引っ張っていきたいから」という回答も25.3%と、他業種との差が開いています。
成長意欲旺盛!「楽しくてやりがいのある仕事」を求める
今後したい仕事としては、「楽しくてやりがいのある仕事」「自身の成長につながる仕事」「楽しく取り組める仕事」が上位にランクインしました。これは、他業種の新入社員と共通する傾向ですが、卸売業・小売業の新入社員は「人脈が広げられる仕事」「お客様の前に立つ仕事」という回答も高く、人とのつながりを感じながら仕事をすることを重要視していることがうかがえます。
成長に必要なもの、成功体験への意識が年々高まる
自身の成長に必要なものとして、「仕事を通じた成功体験」が70.5%と、5年間の調査の中で最高の割合となりました。一方、「失敗体験」は減少傾向にあり、成功体験を積み重ねていくことが成長には必要だという価値観が年々強くなっているようです。
スキルアップへの意欲も高く、自発的な学びにも積極的
スキルアップのために今後取り組みたいこととして、「会社での仕事を通じてスキルアップを図っていきたい」が62.7%とトップに。次いで、「自分の人脈を通じてその人から学びたい」「ビジネス本を読んでみたい」という回答が多く、自発的な学びにも積極的な姿勢が見られます。
新入社員育成のポイント
卸売業・小売業の新入社員は、不安感を抱えながらも、成長意欲の高い“アフターコロナ第1世代”であると言えます。彼らの成長を支援するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
早期の現場配属と成功体験の積み重ね: 早い段階で現場の実務を任せることで、成功体験を積み上げ、自己効力感・自己有用感を高めましょう。
丁寧な指導と事後フィードバック: 業務を任せる際には、手順や成功ポイントを丁寧に伝え、失敗した際には適切なサポートとフィードバックを提供しましょう。
人脈形成の支援: 様々な店長やリーダーとの交流機会を設け、目指すべき姿の解像度を高めましょう。
全社的な育成体制の構築: 現場での育成に頼りすぎず、全社的な育成プログラムや制度を構築することで、新入社員の早期戦力化と定着を目指しましょう。
変化に対応する人材育成こそ、企業の未来を拓く
卸売業・小売業は、DXや消費者ニーズの変化など、常に変化を求められる業界です。新入社員の不安を解消し、彼らの成長意欲を最大限に引き出す人材育成こそ、企業の未来を拓く鍵となるでしょう。