美味しさと伝統が交差するウイスキー作り
熊本県山都町に位置する老舗酒蔵「山都酒造」。1821年に創業し、200年以上にわたり、地域の自然の恵みを活かした酒造りを行っています。ここでは、次世代の若手蔵人、内古閑さんが製造・管理に携わり、革新と伝統の両方を追求しています。
内古閑さんは2019年に入社し、日々ウイスキーと向き合っています。「様々な経験を通じて酒造りの知識や技能を身につけてきました」と述べる彼は、ウイスキーの美味しさを追求するため、独自の熟成方法に取り組んでいます。
熟成の技術と環境
「山都酒造では、山都町の高地の環境を利用し、日中と夜の寒暖差を最大限に活かした熟成を行っています。四季を感じさせる環境で、若いうちから樽の香りや複雑な風味を引き出すことができます」と内古閑さんは教えてくれました。このような環境があるからこそ、山都酒造のウイスキーは個性豊かで深みのある味わいが特徴です。
高齢化が進む地域で、内古閑さんは地域の文化や価値観に対して新たな発見をし、「古き良きものを残しつつ、新商品へのチャレンジが必要だと感じています」と語ります。地元愛を持つ内古閑さんは、山都町の活性化にも力を入れる意向を示しています。
熊本の大地がもたらす豊かさ
山都町は、自然の中で育まれた高品質な水がウイスキー作りに欠かせない要素です。阿蘇山系の伏流水は、ミネラルバランスが理想的で、ウイスキーの製造に最適な条件を整えています。そして、1884年には国宝にも指定された通潤橋がこの地のシンボルとして、歴史と風情を漂わせています。これらの自然環境が、山都酒造の酒に深い味わいをもたらしています。
ここでしか味わえないウイスキー「矢部」と「新武」
山都酒造では、新しい試みとして「矢部」と「新武」という2つのウイスキーを展開しています。「矢部」は2025年の発売を予定しており、地域の名前に由来したブレンデッドウイスキーです。グレーンウイスキーをベースに、モルトウイスキーを加えることでバランスの取れた味わいが楽しめます。特にスモーキーさと余韻が特徴で、飲む者に山都町の歴史を感じさせる一杯です。
一方「新武」は2024年に発売されるシングルモルトウイスキーで、九州の自然を反映したデザインとコンセプトが際立っています。この製品は武士道の精神と時の流れを感じさせる作品となっており、消費者に深い感銘を与えることでしょう。
未来に向けて
内古閑さんが目指すのは、ウイスキー作りを通じて地域への貢献と次世代への引き継ぎです。「私の母の故郷であるこの地に何か力になりたいと考えています。地域の名産品として、また次の世代に受け継がれるべき文化の一部として、山都のウイスキーが育っていくことを願っています」と力強く語ります。この熱意は、今後のウイスキー市場において重要な役割を果たすことでしょう。これからも山都酒造のウイスキーから目が離せません。