ロート製薬、ヘアケアへの挑戦
ロート製薬株式会社は、大阪に本社を構え、個人のニーズに応じた高機能製品の開発を進めています。特に、加齢に伴う髪の悩み—うねりや白髪、ぱさつきなど—に焦点を当て、サイエンスの力を駆使した研究に挑戦しています。
研究の歴史と背景
ロート製薬がヘアケア領域に注目し始めたのは、1995年にさかのぼります。それ以来、皮膚や髪に関する様々なトラブルに対して研究を重ねてきました。今日、消費者がヘアケア製品を選ぶ際、見た目や香り以外に、自分の髪や頭皮の悩みに合った製品を選べずに困惑しているといった声も多く聞かれます。これに対し、スキンケア製品は科学的根拠に基づいた選択が主流であるため、ヘアケアにも同様のアプローチを取り入れることを目指しています。
研究が注目する2つのテーマ
ヘアケアに関する研究の中から、以下の2つのテーマが特に注目されています。
1. 脂肪幹細胞研究を応用したエイジング頭皮研究
2. 毛髪の内部構造にアプローチしたうねり研究
1. 脂肪幹細胞研究と頭皮の関係
伝統的には毛髪や毛包へのアプローチが主流でしたが、近年、頭皮の健康が毛髪の状態に大きく影響することが認められています。女性は30代後半から70代にかけて、頭皮のフィジカルな状態が悪化しやすく、「頭皮やせ」の現象が観察されます。この現象に対処するため、ロート製薬は再生医療や皮膚の研究から得た知見を適用し、脂肪幹細胞の重要性に注目。これらの細胞の数を増やす方法を探求しています。
脂肪幹細胞の役割
脂肪幹細胞は、毛周期や毛幹伸長に関与する分泌因子を生成します。これらの細胞が減少することが頭皮環境の悪化を引き起こすため、脂肪幹細胞の増殖を促進するアプローチが重要とされています。特に、コラーゲンによって脂肪幹細胞が育つ環境を整えることが研究されています。
2. うねり研究に関する新たな発見
もう一つの研究テーマは、髪の内部構造に関するうねりの解析です。加齢や他の要因によって髪質が変わり、うねりが生じることが多く見受けられます。これまでの装置では、どういった内部構造がその原因となるか明らかではありませんでした。そのため、ロート製薬は大型放射光施設SPring-8を活用し、物質のミクロレベルでの解析を行いました。具体的には、くせ毛の髪において、毛髪内部の繊維構造(Intermediate Filament)を調査し、髪のうねりがどのように引き起こされるかを解明しようとしています。
トステアによる毛髪内部構造の改善
最近の研究では、トステア(アミノエチルチオコハク酸ジアンモニウム)が毛髪内部に与える効果についての知見が深まっています。これを使用した場合、うねりが改善されていることが確認されました。この結果は、髪の外見だけでなく、内部構造の改善にも繋がる可能性を示しており、今後のヘアケア商品開発における基礎データとして重要な役割を果たすでしょう。
未来への展望
ロート製薬は、加齢による不可逆な髪の問題に対する研究をさらに進め、消費者が満足できる製品の開発に繋げることを強く期待しています。サイエンスに基づいたアプローチで、髪に関する悩みの根本的な解決を図る新たな挑戦は、今後も続いていくでしょう。