冷菓の品質保持に貢献する新しい知見
大阪電気通信大学の湯口宜明教授とMP五協フード&ケミカル株式会社の研究チームが、アイスクリームなど冷菓の品質保持のための新たなメカニズムを解明しました。この発表は、日本応用糖質科学会2025年度大会で行われ、冷菓に広く使われる増粘多糖類であるキシログルカン(XG)とローカストビーンガム(LBG)の相互作用に基づいています。
研究の背景と目的
冷凍・解凍プロセスにおいて、氷結晶の成長や融解は冷菓の品質劣化を引き起こす重要な要素です。特にアイスクリームなどのデザートにおいては、安定したゲル化技術が求められています。これに対し、LBGは単独でもゲル化が可能であることが知られていますが、XGとの混合により、より強化された相乗効果が期待されています。この研究は、その具体的なメカニズムを解明することを目的としています。
研究方法と観察
研究では、タマリンドガム由来のXGとLBGの混合水溶液に対して、冷凍・解凍処理を行い、ゲル化挙動を詳細に観察しました。SEM(走査型電子顕微鏡)と小角X線散乱法(SAXS)を用いた多角的アプローチにより、構造的な観察が行われました。特に、冷凍・解凍サイクルの回数が増加することで、ゲル内に強固な三次元ネットワークが形成されることが確認されました。
相乗効果の確認
SEM観察により、試料の網目構造が明らかになり、冷凍・解凍の繰り返しによって網目サイズが小さくなることが観測されました。また、SAXSの測定結果からは、散乱強度の上昇が示され、ゲルの構造秩序性が向上していることが定量的に確認されました。このように、XGとLBGの相互作用は、冷菓の保型性を向上させるための鍵となることが示唆されています。
期待される応用と今後の方向性
本研究の成果は食品業界において、特にアイスクリームや冷菓の保型性保持技術に直結する重要な知見です。食品メーカーは、このメカニズムを利用して製品開発に新たな可能性を見出すことができるでしょう。また、今後は他の多糖類との複合利用や新たな添加剤設計の展開が期待されています。研究チームは、この成果を基にさらなる研究を進め、冷凍食品全般への応用を図る意向を示しています。
研究発表者
この研究は、湯口教授をはじめ、大阪電気通信大学の早瀬修平さん、鈴木瑠莉さん、山中美月さんと、MP五協フード&ケミカルの大林祐貴さん、鈴木夢生さん、大和谷和彦さんによって行われました。彼らの研究で解明されたメカニズムは、冷菓の品質向上に大きく寄与するでしょう。
参考リンク
冷菓の進化は、今後も続きます。この新たな知見が、より美味しいアイスクリームやデザートの開発に貢献することを期待しています。