介護職不足の現状とシニア歓迎求人の傾向を考察
介護業界では、将来的に多くの介護職員が不足するという懸念が高まっています。この背景として、シニア向けの介護職求人においては、特に60代の正社員求人が増加していることが挙げられます。シニアジョブが実施した最新の調査結果から、介護職の現状や求人傾向について詳しく分析します。
介護職の求人状況と需要の変化
介護職は、全職種の中でも依然として需要が高まっており、特に2022年8月にオープンした「シニアジョブ」では、介護職・ヘルパーの求人が最も多く掲載されています。近年、厚生労働省の報告などにより、2040年にはさらに57万人分の介護職員が不足すると予測されています。このような状況下で、シニア向けの求人が増えるのは自然な流れとも言えます。
調査の目的と手法
シニアジョブでは、2024年10月2日現在の介護職求人の傾向を調査しました。調査対象として、北海道、栃木県、東京都、福井県、愛知県、大阪府、愛媛県、福岡県の8都道府県のデータを分析しました。それにより、介護職員の必要数と求人の関連性を調査しました。
調査結果の主要ポイント
調査により、以下の6点が浮き彫りになりました。
1. 将来の不足が大きい都道府県では正社員求人が多く、パート求人は少ない。
2. 将来の不足が小さい都道府県では正社員求人が少なく、パート求人が多い。
3. 不足が大きい都道府県では60代歓迎求人が多く、70代以上は少ない。
4. 小さい都道府県では60代歓迎と70代以上の求人差が小さい。
5. 平均給与には都道府県間で差があり、不足の大小との関連は見られない。
6. 正社員求人の平均給与は低めだが、パートやシニア歓迎求人では他職と同程度。
この調査結果は、介護職が不足している地域では、正社員の採用が優先され、シニア世代に特に力を入れていることを示しています。たとえば、北海道では正社員求人が48%に上り、栃木県も44.8%といった割合です。一方で、介護職員の不足が少ない福井県では、正社員が28.6%、パートが64.3%と状態が逆転しています。
シニアに期待される役割
特に60代については、各都道府県で歓迎されており、北海道が62%、栃木県は82.8%という高い数値が見られます。一方、福岡県では60代の歓迎率は8.8%と他の地域と比べてグッと低下します。しかし、70代についても同様の傾向が見られ、社会全体としてシニアが果たす役割が大きいことが考えられます。
介護職の将来に向けた提言
今回の調査を通じて見えてきたのは、介護職の将来的な構造変化と、シニア層をより多く取り入れようとする動きです。介護職員の不足が深刻になると予測される中で、シニアジョブは「50歳以上のシニアが安心して働ける環境」をさらに強化し、求人市場におけるバランスの取れた応答が求められています。
今後ますます介護職のニーズが高まることが予想されるので、企業側はもちろん、求職者にとっても柔軟な対応が必要になるでしょう。この調査の意義は、求人の実態を知り、適切な情報を提供することで、シニアの雇用促進につなげることです。介護においては、経験も含めたシニアの力を最大限活用するための道筋を考えていく必要があります。