娘をグルーミングする先生
概要
母親の佐倉真美は、高校1年生の小春を一人で育てている。何気ない日常の中で、真美は小春の成績が下がっていることに気付き、塾を探し始めた。そして、見つけたのは熱心に教える塾長の森先生だった。森先生に教わることで小春の成績は上昇し、真美は安心を得た。しかし、ある日小春は交際相手として森先生を家に連れてくる。
チャイルドグルーミングとは
この作品が描くテーマは、チャイルドグルーミングと呼ばれる行為である。これは、性に関する虐待を目的として、子どもとその信頼関係を築く手法である。特に、加害者は、子どもやその家族に対して感情的なつながりを作り、逆に虐待に対する抵抗を弱める。映像や文献で見聞きすることはあっても、その実態に対する理解は深まらないことも多い。
斉藤章佳氏の監修のもと
作品を監修している精神保健福祉士の斉藤章佳氏は、性的グルーミングのメカニズムについて詳しく解説している。加害者は、子どもが互いに特別な関係にあると思わせるように、巧妙に環境を整える。森先生のような存在は、このように子どもを「パワー」と「コントロール」で手なずけ、徐々に支配していくのだ。
透明人間の加害者
森先生のような加害者は、「透明人間」のように、周囲からは怪しく見えない場合が多い。普段の生活の中で目立たない存在であり、性的な欲望を表に出さないため、周囲の人々には気付かれない。文献の中で、彼らが持つ3つの「なし」(同意なし、対等性なし、自発性なし)について触れられており、この観点から彼らの危険性を浮き彫りにする。
優しさがもたらす危険
加害者が最も重視するのは、子どもに対する「優しさ」である。彼らは異常に優しく、子どもと信頼関係を築くために、一般のカウンセラー以上の受容力や共感力を示す。SNSを使った交流から始まり、「おはよう」や「おやすみ」といった小さなやり取りを通じて親しみを持たせる。そのため、被害者は彼らを唯一の「ひだまり」として認識してしまう。
作品の意義
本書には、斉藤氏が行ってきた加害者臨床の実績をもとに描かれたリアルな物語が詰まっている。私たちの身近にも、森先生のような加害者が潜んでいるかもしれず、早期に気付くことが大切である。本作品は、親子で一緒に考えるべきテーマを提供してくれる貴重な作品となっている。
電子書籍の発行に関して
この漫画は株式会社KADOKAWAから2025年4月26日より電子書籍として配信される。心に深く刻まれる内容が、読者の皆様に新たな気づきを与えてくれるだろう。また、これまで気付けなかった社会の裏側に目を向けるきっかけとなることを強く願っている。対象年齢を問わず、親子で読むことをお勧めしたい。
著者について
著者ののむ吉氏は、心理学を学んだ経験を持ち、それを生かした心に響くコミックエッセイを手掛けている。InstagramやX(旧Twitter)での活動を通じて、幅広い読者層にリーチしています。彼女の作品は、ストーリーだけでなく、読者とのコミュニケーションを大切にする姿勢が特徴です。
この電子書籍は、親子での読書を通じて、親の目線や子どもの目線を互いに理解し、コミュニケーションを深める貴重な機会を提供する。子どもを守るために、早期の気付きが重要である。この漫画は、そうした意識を持つ一助となることを願っている。