熊本と名古屋、2.5次元MOFの開発に成功
日本の科学界において、画期的な成果が発表されました。熊本大学大学院先端科学研究部の張中岳准教授と名古屋大学の阿波賀邦夫教授(現豊田工業高等専門学校校長)が率いる研究チームは、2次元導電性の金属有機構造体(MOF)に関連する新しい形状、すなわち「2.5次元MOF」を開発しました。これにより、長年の懸案であった高品質単結晶の合成や構造と物性の関係解明にも成功を収めました。
高品質単結晶の合成
今回の研究で使われたのは、三次元構造を持つトリプチセン誘導体です。この材料を用いることで、層間のπ–π相互作用を抑制しながらも、ガラス管内での緩やかな拡散法により、直径0.3mmを超える高品質単結晶の育成を実現しました。これにより、電子や陽子の異方的な同時伝導という新たな物理特性の実証にも成功しました。
水素結合と物性の関係
詳細な構造解析の結果、プロトン化されたカテコール部位が水素結合ネットワークを形成し、このネットワークが特異な物性を生み出していることが明らかになりました。具体的には、層間方向に生じる反強磁性と、電子・陽子の異方的な同時伝導が確認されました。これまでの研究ではなかなか解明されなかった物性の仕組みが、今回の結果により大きく前進しました。
新しい概念「2.5次元MOF」
研究チームは、構造は2次元でありながらも、電荷やスピンの相関が3次元的に広がる新たな概念「2.5次元MOF」を提唱しました。この発見は、今後の科学研究や応用に大きな影響を与えると期待されています。具体的には、量子情報デバイスや化学センサー、さらには次世代電池材料としての利用が見込まれています。
今後の展望
この重要な成果は、令和7年7月23日にアメリカ化学会雑誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。また、本研究は日本学術振興会や公益財団法人ヒロセ財団、アメリカ国家科学財団(NSF)からの支援を受けて進められました。今後、より多くの技術応用が進むことが期待され、科学界の注目が集まっています。
今後の研究も楽しみですが、2.5次元MOFの概念が、未来の技術革新や新たな材料開発に寄与することを期待したいと思います。