IOWN APNによる遠隔手術支援の実証
日本の医療界において革新的な一歩を踏み出したのは、NTTとその連携パートナーである弘前大学医学部附属病院、メディカロイドなどの企業です。彼らは、最新のIOWN APN技術を利用して、物理的に離れた二つの病院間での遠隔手術支援の実証に成功しました。
1. 実証の背景
この取り組みは、手術支援ロボットを介した遠隔手術が地域医療の格差解消に寄与する可能性を持つことを背景にしています。特に、外科医師の不足が問題視される地域において、質の高い医療を受ける機会を提供するための方策として注目されています。日本外科学会は、今後の社会実装に向けたガイドラインの改正を計画しています。
2. 実証の目的
今回の実証では、遠隔手術支援の実現にはネットワークの遅延やゆらぎを最小限に抑えることが課題でした。また、遠隔の医師同士がまるで同一の手術室にいるかのようなコミュニケーションを可能にすることも大きなテーマです。
3. 実証の内容
弘前大学病院とつがる総合病院の二つの医療機関が、NTT東日本が提供する高接続性を誇るAPN技術で結ばれました。このネットワークによって、手術支援ロボット「hinotori™」を用いた実演が行われ、実際に医師による操作が行われました。
3.1 通信環境の評価
手術支援ロボットの操作については、片道の伝送遅延がわずか0.28ミリ秒、遅延のゆらぎもほぼゼロに近い測定結果が出ました。従来のネットワークと比較しても、APNは伝送遅延性能において約4倍、最大遅延のばらつきにおいては120倍以上の優れた性能を示しました。
3.2 臨場感あるコミュニケーション
評価の一環として、医師たちにこのコミュニケーション環境がどう感じられるかを尋ねたところ、非常に高い評価を得ました。音声と映像の信号が大容量かつ低遅延で伝送され、立体音響や高精細なリモートカメラを交えた環境によって、まるで同じ手術室にいるかのような臨場感が実現しました。
4. 各社の役割
本プロジェクトでは、NTTが遠隔手術支援技術の設計と解析を担当し、NTT東日本がAPNを提供。弘前大学病院が手術環境を用意、メディカロイドはロボット支援を担当しました。また、鹿島建設は高音質の立体音響スピーカーを提供しました。
5. 今後の展望
今回の成功により、APNによる性能は明らかになりましたが、今後はこれを実際の医療現場に導入するためのフィールド実証を進めていく予定です。医療の質向上や、どこにいても質の高い医療を受けられる社会の実現に向けて、多くの期待が寄せられています。
このイニシアチブは、今後の医療の在り方を大きく変える潜在的な力を秘めており、日本全体が一つの手術室のように機能することが期待されています。患者は、どんな医療環境でも最高の治療を受けられる日が近づいているのかもしれません。