2025年度新入社員意識調査が示した卸・小売業の現状と将来の課題
2025年度の新入社員意識調査が行われ、卸売業と小売業に関わる新人たちの仕事に対する考え方が浮き彫りになりました。調査はALL DIFFERENT株式会社とラーニングイノベーション総合研究所によって実施され、450万人を超えるデータを基にした結果として報告されています。
調査の背景と課題
卸売業・小売業は、近年の人手不足や価格転嫁、2025年の崖、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランジション(GX)への対応といった、様々な経営課題に直面しています。現場では顧客のニーズの多様化が進む中、業務が複雑化しているため、従来の人事制度を見直す企業が増えています。
また、新入社員が早期に辞める割合が高く、このままでは企業の成長に影響を及ぼす可能性があります。これに伴い、適切な育成体制を構築し、新入社員の考えや価値観を理解することが求められています。
調査結果の概要
1. キャリア志向なしが管理職志向を超える
2025年度の新入社員に対する調査では、「特にキャリアについての志向はなく、楽しく仕事をしていたい」という回答が一位になりました。これは調査開始以来、初めてのことです。
一方で、「リーダーとなりマネジメントを行いたい」という志向は前年よりも減少しており、キャリア志向の低下が見受けられます。管理職を目指す姿勢が希薄化していることが確認でき、会社全体の成長戦略に不安をもたらす要因となるかもしれません。
2. 高い勤続意向
調査において、72.5%の新入社員が「できれば今の会社で働き続けたい」と回答しました。これは7年間の調査の中で最高の結果です。単に安定を求めるだけでなく、良好な人間関係や高い給与・賞与を求める声が多く寄せられています。
3. 職場環境と時間の柔軟性
「職場の人間関係」や「高い給与」が新入社員の勤続意向の重要な要因として挙げられました。また、半数以上が「定時に帰りたい」と考えており、自身の生活の質を優先する傾向が強く見受けられます。
4. 20代の時間の使い方
時間の使い方としては「仕事とプライベート優先」が多くの新人に支持され、自己投資も含めたバランス感覚が大切にされています。生き方の多様性を意識した新入社員たちの姿が見えます。
5. リーダーへの期待
新入社員が考える理想のリーダー像は「リーダーシップが求められる」と「強い意志が求められる」が多くを占めており、将来の企業において求められるリーダー像が浮かび上がります。
結論と専門家の見解
今回の調査結果から浮き彫りにされたのは、卸売業・小売業の新入社員が安定志向を持っている一方で、キャリア志向が薄まりつつある点です。この状況は、新入社員が将来的なリーダーへとなる道筋を確保するための企業側の育成方針に影響を及ぼすでしょう。
バイタルスキルの教育やキャリアプランを意識させる機会を増やすことが求められます。今後、現場での実体験や指導を通じて、企業の組織開発や人材育成が重要な課題となるでしょう。卸売業と小売業は急速に変化する市場に対応するため、育成体制について見直しを図る必要があります。リーダーとしての素養を持つ人材の育成が、企業の競争力を生む源泉となることでしょう。