歴史の中に見える歌舞伎の姿
2025年8月27日、新たに出版される『戦下の歌舞伎巡業記』は、戦前から戦後にかけての歌舞伎の貴重な巡業記録を収めた一級の史料となります。本書には、古い茶封筒から発見された『旅行日誌』が基となっており、その著者は岡崎成美氏の祖父、歌舞伎狂言作者として知られる竹柴薪助氏(1883~1975)です。
発見の経緯とその内容
この『旅行日誌』は、1932年から1949年までの17年間、日本各地を巡業した際の詳細な記録を残しています。日本全国の250箇所以上の巡業地や、移動距離はなんと約4万キロメートル。六代目尾上菊五郎や十五代目市村羽左衛門などの名優たちが参加した公演の数々が、こうして克明に記録されていることが、本書の魅力を一層高めています。
記録されている内容は、役者の役柄や、演じられた演目、興行の詳細、宿泊施設、交通手段、食事の内容、さらには収支明細など多岐にわたります。特に、狂言作者である竹柴氏が、どれだけ興行全体に目を配っていたかが伺える内容であり、専門家からも高く評価されています。
編集者としての岡崎成美氏の役割
著者の岡崎成美さんは、歌舞伎に対する深い造詣を持つ編集者であり、その経験を活かして本書を構成しています。膨大な周辺資料をもとにした解説は、当時の社会情勢を映し出す貴重な情報を提供しています。新聞や演劇雑誌、さらに専門書籍、鉄道の時刻表、地図、演劇チラシなどを徹底的に調査し、研究者へのインタビューも行うことで、より深い理解を得ています。
このような背景のもとに生まれた本書は、単なる史料としてだけでなく、熱く生きた演劇人たちの物語として読者に感動を与えます。歌舞伎という日本の伝統芸能が、激動の時代をどう乗り越えたのかを知ることができる貴重な内容です。
発売情報と書籍の仕様
新刊『戦下の歌舞伎巡業記』は、河出書房新社から出版され、272ページにわたる情報が収められています。定価は3,520円(税込)で、ISBNは978-4-309-03223-8です。なお、電子書籍の発売予定は今のところありません。
この本は、すべての歌舞伎ファンや演劇関係者にとって興味深い内容となっており、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。歌舞伎の魅力に新たな視点を与えるこの作品に、注目が集まっています。ぜひ、歴史の一片としての歌舞伎の美しさや、演劇人たちの情熱をご体感ください。
ここで紹介した内容は、岡崎成美氏の手によるきわめてユニークな作品の一端に過ぎません。本書の中には、他にも多くの感動的なエピソードが詰まっており、読む人の心をつかむことでしょう。歌舞伎の歴史を深く理解するために、この本はまさに最適な資料となるでしょう。