柏市の教育現場におけるAIチャット相談システム
日本の教育現場では、2024年10月21日に柏市内の小学校および中学校で、生成AIを用いた悩みチャット相談システムのモデル実証が始まります。この取り組みは、生徒が抱える悩みを学校内で早期に発見し、解決へと導くことを目的としています。実施するのは、傾聴AIアルゴリズムの開発を行う株式会社ZIAIです。
背景
近年、日本におけるいじめや不登校、児童虐待などの問題は深刻です。2024年には、いじめの認知件数が歴史的な高水準を記録し、不登校の生徒数も増加傾向にあります。気になるデータによれば、多くの生徒が相談をためらっている実態が浮き彫りになっています。例えば、小学生の36%、中学生の42%が「誰にも相談しなかった」と回答しています。このような状況を受けて、初期の悩みを抱える生徒が自発的に相談できる環境が求められています。
さらに全国的に配置が進められているスクールカウンセラーは、非常勤職員が多く限られた時間にしか対応できないため、教員の負担が軽減されないのが現状です。教員たちも「働き方改革」が求められ、業務過多の問題に苦しんでいるため、従来の方法では生徒の悩みに十分に対応できないことが明らかです。そこで、生徒が気軽に悩みを打ち明けられる環境を整えることが急務となっています。
モデル実証の概要
柏市のパイロット校に導入されたチャット相談システムでは、24時間いつでも悩みを相談できる体制が整備されます。このシステムは生徒が自身の悩みをAIに打ち明け、そこから得られる傾聴・共感体験を通じで心の負担を軽くすることに力を入れています。また、必要に応じて教育現場やスクールカウンセラーに繋げることで、早期の対応を実施します。
このモデル実証の結果は興味深いものとなりました。相談件数は通常の外部カウンセラーに比べて10倍以上に増加し、生徒たちの総相談時間は275.4時間に達しました。また、1回の相談での平均対話ターン数は9回を記録。驚くべきことに、AIチャット相談に対する生徒の満足度は93.6%に達しました。
生徒の声
生徒たちからのフィードバックもポジティブなもので、「先生や家族には言えないこともAIには話せる」という声や、「プライバシーが守られているので安心して相談できる」という意見が多く聞かれました。これらの声から、AIが生徒にとって心強い相談相手となっていることが分かります。
今後の展望
ZIAIは、このモデル実証を契機に、AI技術のさらなる改善を図り、全国の教育委員会や学校への導入を進めていく方針です。この取り組みは、AIが先生やカウンセラーを代替するものではなく、生徒が悩みを打ち明ける最初の接点として機能し、必要に応じて適切な支援へと繋げる役割を果たすことが期待されています。
ZIAIが目指すのは、2023年において、誰もがいつでもどこでも悩みを相談できる社会を実現することです。これにより、現代社会の複雑化した悩みを少しでも解決できることを願っています。