人的資本開示の戦略転換
2025-07-02 14:26:40

人的資本開示の戦略転換:義務から経営効果の可視化へ

人的資本開示が進化する時代



最近の調査によると、人的資本に関する情報開示が義務から企業戦略にシフトしています。株式会社オデッセイが実施した調査では、従業員1,000名以上または年商500億円以上を誇る企業の人事・経営企画責任者500名を対象に、人的資本の情報開示状況に関する詳細が明らかになりました。

開示の状況



従来の考え方では、人的資本の開示は法令に基づく義務とされていましたが、最近では「企業価値を向上させるための戦略的な活動」として捉えられるようになりました。調査対象企業の67%が人的資本情報を開示しており、特に非上場企業でもこの流れが顕著です。企業が自発的に義務項目以外の情報を開示する割合も46%に達しています。これにより、人的資本に対する企業の視点が大きく変わったことが見て取れます。

管理レベル



しかし、開示が進む一方で、企業は独自の管理指標を設定できているのは33%とまだ十分ではありません。特に、国際的なガイドラインであるISO30414を参考にする企業が増加しており、おおよそ76%の上場企業がこの基準を取り入れることで自己の取り組みを客観的に評価したいと考えています。これは、企業が自社の人的資本をより効果的に管理するための重要なステップと言えるでしょう。

開示・活用の課題



ただし、開示を進める上での課題は明確です。多くの企業は「何を開示すべきか」という戦略的な悩みと、「人事データの一元管理ができていない」という実務的な問題に直面しています。具体的には、上場企業の37%が開示項目の選定に苦労しており、そのうちの56%が自社の独自指標を決めることを希望しています。また、30%がデータの一元管理が進んでいないため、何度も手間をかける実態があります。

可視化の状況



人的資本の可視化も進み、上場企業の73%が何らかの可視化を実現していますが、実行プロセスには依然として多くの手間がかかっています。要するに、データの収集や統合作業が負担になり、その点で多くの企業が悩んでいることが調査結果からも明らかになりました。

有価証券報告書の開示義務



特に注意が必要なのは、2023年3月から義務化された有価証券報告書への記載についてです。上場企業では60%が手作業で作業を進めており、71%がその負担を感じています。この作業は人事部門や経営企画部門のリソースを圧迫し、企業成長の障害とさえなっています。

重視する機能



今後、企業が人的資本情報を管理する際に最も重視される機能は、経営成果を財務・非財務情報で可視化できる仕組みであり、上場企業の83%がこの機能を求めています。これは単にデータ管理の枠を超え、企業の競争力を高めるための新たなニーズとして重要な位置を占めています。

人的資本の活用効果



企業が人的資本情報を活用することで期待される最も大きな効果は、生産性の向上(35%)、採用効率の向上(30%)、後継者育成・配置の最適化(30%)です。一方で、投資家からの評価向上を期待する声は11%に留まっており、企業が人的資本経営を内なる変革のエンジンとして捉え続けていることが明らかです。

まとめ



調査結果からは、人的資本に関する開示が「開示の時代」から「経営効果の可視化」という実践の時代へと進化していることが見て取れます。今後、この状況を打破するためには、データ活用基盤の整備と戦略的アプローチがますます重要になってくるでしょう。企業がこの転換期をどのように乗り越えるかが、その競争力の源泉となるのです。


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会社情報

会社名
株式会社オデッセイ
住所
東京都千代田区霞が関3-2-5霞が関ビル17階
電話番号
03-3500-5221

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