いのち会議が目指す「希望の循環」
2025年10月11日、大阪・関西万博会場で開催された「いのち会議」では、困難を抱える子どもたちの未来をサポートするために、デジタル教育と伴走支援の導入を提案しました。この取り組みは、貧困の連鎖を断ち切ることを目的にしており、「いのち宣言」と「アクションプラン集」の発表を通じて、社会の不平等を解消するための具体的な施策が示されています。
特に現在の日本では、子どもの約9人に1人が相対的貧困状態にあり、その影響は教育や将来のキャリアに深刻な影響を与えています。自己肯定感や学歴の低下、さらには不登校やひきこもりの問題も顕著です。この状況には、経済的な背景以外にもヤングケアラーや発達障がい、外国ルーツといったさまざまな要因が絡み合っており、機会格差が広がっています。
支援の現状と課題
低年齢層向けの食事や学習支援は徐々に増えているものの、義務教育を終えた高校生に向けた支援は不足しているのが実情です。特に、彼らは自身の興味や関心を育む機会を逃しがちで、計画性や社会的なつながりを築くことも難しくなっています。このような状況は、将来的に経済的・精神的自立が困難になる要因ともなりかねません。
認定NPO法人CLACKはこの課題に立ち向かい、特に困難を抱える高校生に対してデジタル教育とキャリア教育を融合した支援を実施しています。CLACKは教育委員会や地域の高校、NPO、ソーシャルワーカーと連携し、安心して過ごせる居場所と主体的に学ぶ環境を提供しています。
Tech Runwayプログラムの効果
CLACKが提供する「Tech Runway」プログラムは、3ヶ月のデジタル教育とキャリア教育を完全無料で行います。授業料だけでなく、交通費や使用するパソコンも支給され、経済的な理由で学びを諦める必要がありません。これまでのプログラムでは、約500名が参加し、93.8%もの高い完走率を達成しているのです。また、修了生の約半数は情報系の大学やIT企業への進学・就職を果たしています。これにより、未経験からIT人材としての道を歩んでいる若者も増えてきました。
AI時代に向けた新しい挑戦
AI技術が急速に進展する中で、これからの労働市場も変わり続けています。CLACKはこれに応じて、更なる学びのコースを増やし、全国どこでもアクセス可能なオンラインプログラムを展開する予定です。質の高い学びの環境を提供することで、場所に関係なく、より多くの子どもたちがチャンスを手に入れることができるように目指しています。
これらの活動を通じて、逆境を経験した子どもたちが貧困や差別を乗り越え、社会で自立していく姿は多くの仲間や次世代の希望となるでしょう。すべての子どもが自身の人生を切り拓けると信じることができる「希望の循環」を実現するために、いのち会議はさらなる連携を強化し、新たな技術や方法で全国規模での支援を拡大していきます。
参考情報
記事に関する問い合わせ
いのち会議事務局、大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)特任助教 宮﨑 貴芳、教授 伊藤 武志(TEL: 06-6105-6183 E-mail:
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