三菱重工業は、南フランスで建設中の核融合実験炉ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)向けの重要な部品、外側垂直ターゲットを新たに20基受注しました。これは国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)からの発注であり、ITERプロジェクトの進展に寄与する重要な決定です。
ITERプロジェクトは、太陽光を生み出す核融合反応を地球上で実現することを目指した国際的な取り組みであり、日本、アメリカ、欧州などが参加しています。 ITERでは、58基のダイバータが配置される計画で、そのうちの全てを日本が製作することになっています。すでに初回製作分の6基と第2回製作分の12基を受注しており、今回の第3回製作分の受注により、すでに発注済みの38基全ての製作を三菱重工が担うことになりました。
これにより、ITERプロジェクトへの貢献が一層強化され、核融合エネルギーという持続可能なエネルギー源の実現に向けた道筋がさらに明確となるでしょう。特に、ダイバータはトカマク型核融合炉において最も重要な機器であり、安定したプラズマ閉じ込めにおいて不可欠な役割を果たします。ダイバータは、核融合反応で生成されたヘリウムなどの燃え残り燃料や不純物を排出するため、炉心プラズマとの相互作用が重要な要素となります。
ダイバータが受ける熱負荷は非常に高く、最大で20MW/m²に達することが予想されています。これは、小惑星探査機が大気圏に突入するときに受ける表面熱負荷に匹敵し、さらにスペースシャトルが被る負荷の約30倍になります。この厳しい環境下で外側垂直ターゲットが機能するためには、複雑な形状を持つ構造体が求められ、高度な製作・加工技術が必要です。
三菱重工業は、ITER向けの重要機器であるトロイダル磁場コイルについても、19基のうちその5基を受注しており、すでに2023年までに出荷を完了しています。これらの実績は、三菱重工が持つ高度な製作技術と量産化能力に基づいており、今後はダイバータだけでなく、波長ランチャーといった他の主要機器の製作も引き続き行っていく意向です。
さらに、ITERの次のステップとして、核融合原型炉の設計や開発支援にも積極的に関わり、核融合エネルギーの実現に向けた取り組みを拡大する計画です。核融合は、太陽が発光するメカニズムを利用したクリーンかつ持続可能なエネルギー源であり、地球温暖化やエネルギー問題の解決につながることが期待されています。
このように、三菱重工業の取り組みは、未来のエネルギー供給において重要な役割を果たすものであり、これからの発展に大きな期待が寄せられています。