鉄道ファンの期待を超えたデジタルラリー
2024年3月、JR系のグループ会社4社が横断的に実施した「東名阪交通系ICカード・デジタルラリー」の結果が発表されました。この取り組みは、交通系ICカードを使用し、鉄道車両をモチーフにした限定デジタルアイテムであるNFTを獲得できるという、鉄道ファンにはたまらない企画でした。実施は「ecw+プロジェクト」という名のもと、東名阪エリアでの連携が進められており、新しいデジタルコンテンツを通じて一体感を求める結果が得られました。
デジタルラリーの内容と参加者の動向
このデジタルラリーは、参加者が東名阪エリアにある9か所のスポットを訪れ、交通系ICカードをタッチしてNFTを手に入れるという形式でした。キャンペーン期間中、3,418人が参加し、合計3,954回のタッチが記録されました。簡単に実行できる「タッチ」の行為が、NFTやWeb3技術に対する参加者の興味を喚起し、実際の参加に繋がったことがデータによって示されています。
特に、駅構内や人の動線上に設置されたスポットでは、自然に訪れやすくなっており、参加のハードルも低くなっています。更に、全てのエリアを巡った参加者が多く存在し、ラリー形式の楽しみが行動を促していることも結果から伺えます。これは、NFTが報酬としての魅力を持っていることで、参加者の目的意識も強かったことを意味しているでしょう。
NFTの可能性と課題
本施策において発行されたNFTは987個であり、参加者の多くは、一度NFTを取得したことでその魅力に惹かれ、さらなるNFTの収集に意欲を示しました。特にゲーム「ソダテツ」との連携が強調されます。ゲーム内でNFTを活用できることで、参加者は実際のゲームプレイを通じて二次的な楽しみを得ることができました。この流れによって、79.5%の参加者が2か所以上のスポットを訪れ、よりアクティブな行動が促されたのです。
とはいえ、Web3ウォレットの開設率は15.1%に留まり、全体的にNFTを取得できなかったバックグラウンドには、技術面での戸惑いや手間があったことも示唆されています。今後は、これらのハードルを低くすることが課題であり、参加者が気軽に感じられるような仕組み作りが求められているでしょう。
アンケート結果から見える満足度と改善案
ユーザーの声を収集するために実施されたアンケートによれば、参加者の62.2%が「鉄道が好きだから」という理由で参加しており、次いで「スタンプラリー形式が楽しそうだったから」との回答も目立ちました。施策の全体的な満足度は84.6%とかなりの高評価を得ており、NFTを報酬とする形式が一定の評価を得ていたことが分かります。
しかしながら、参加者からはキャンペーンの期間延長や対象エリアのさらなる拡大、アクセスの良いスポット増設などの改善点も指摘されました。人々がより多く参加したいと感じられる環境を作ることが、今後の施策において重要な視点となるでしょう。
新たな可能性への期待
本施策では、NFTやブロックチェーン技術が日常生活の中で浸透していく可能性が見えたこと、またそれによりさまざまな業界に展開できる余地があることが確認されました。このような取り組みは、観光や小売、エンターテインメント業界など、異業種間でのコラボレーションにも発展する可能性を秘めており、さらなるお客様との接点を持ちうる鍵となるでしょう。
今後も、鉄道事業者だけでなく様々な業界と連携しながら、デジタルコンテンツを通じて高いエンゲージメントを得られるような施策を継続して展開していくことが期待されます。NFTやブロックチェーン技術に興味がある企業や自治体は、ぜひこの機会に各社に問い合わせてみてはいかがでしょうか。