企業が抱える人材課題と新たな雇用施策の動向
株式会社マイナビが発表した「企業の雇用施策に関するレポート2026年版(2025年実績)」からは、企業が直面する人材の定着や活用に関する意識の変化が浮き彫りになっています。このレポートは、1,500名の中途採用業務を担当する人事担当者を対象に行われました。
新規採用よりも定着が重要視される時代
調査によると、「新規人材の確保」よりも「人材の定着」を課題として重視する企業が多いことがわかりました。実際に、50.9%の企業が人材の定着を重要視していると回答し、新規採用を重視している企業の25.8%を大きく上回りました。これにより、企業の人材課題は新規採用だけでなく、在籍する人材の戦力化や活用へと広がっていることが見てとれます。
特に「若手の早期戦力化」や「シニア人材の活用」に関する課題を比較すると、シニア人材の活用が進まないことが44.2%に達し、「若手の早期戦力化」の28.7%を上回る結果となっています。こうした背景から、企業は外部からの新規採用よりも、内部での人材定着や活用に重きを置いているようです。
賃上げの動向と世代間の違い
次に、2025年に実施される賃上げについての調査結果も興味深いものです。調査によると、賃上げの実施率は全年代で約8割に達していますが、年代による差も明らかになりました。特に30代の実施率が81.7%と最も高く、20代も80.8%で続いています。このように賃上げ自体は幅広く実施される一方、賃上げの水準については若い層に高い割合で高水準が見られることが特徴です。
若手が特に高水準の賃上げを受けていることは、今後の世代間の賃金格差に影響を与える可能性があるため、要注目です。
教育投資の増加とスケールの影響
教育投資に関しても注目すべき結果が見られました。リスキリングを含む従業員への教育投資を行う企業は前年より増加し、特に大規模企業においては9割を超えています。平均投資額も208.6万円に達し、前年の165万円よりも大幅に増加しました。企業規模による差が大きく、大企業の教育投資額は中小企業を200万円以上上回っています。
このことから、企業の人材獲得や定着率は、教育に対する投資や支出にも必ずしも比例しないことが見えてきます。教育への投資が人材確保にどれほどの影響を与えるか、今後の動向が注視されます。
ビックステイ現象の到来
調査の最後に興味深い点がありました。それは「ビッグステイ」と呼ばれる現象が日本にも到来するとの予測です。アメリカでは同じ会社に長く留まる労働者が増えているとのことですが、日本の企業の84.8%が、同様の傾向が日本でも見られると考えています。
特に賃上げを実施している企業では、ビッグステイが到来すると考える割合は88.3%にも達し、3年以内に来ると考える企業が55.7%に上ります。この現象に関する理由として、日本独自の雇用慣行や人手不足、働き方改革が挙げられています。
企業は、賃金要因に限らず成長を伴った定着を求めており、単なる残留ではなく、戦力となる人材の育成や待遇の見直しも求められています。
結論
今後の雇用施策は、企業が抱える人材課題の変化によって形作られるでしょう。企業は、若手だけでなくシニア層の活用を含め、より柔軟で効果的な処遇や育成の取り組みが求められます。これは、単に人材の定着を図るだけでなく、組織全体の活力を高めるためにも重要な課題です。