はじめに
近年、日本においてキャッシュレス決済が急速に拡大しています。TIS株式会社が実施した「令和のキャッシュレスVS現金」調査によると、全30シーンの中で22のケースで「キャッシュレス派」が勝り、特に冠婚葬祭シーンにおいても驚くべき結果が出ています。この現象は日本の経済活動や社会文化の変化を反映しているでしょう。
調査の概要
今回の調査は、全国の15歳から69歳の男女600名を対象にインターネットで実施されました。日常的な支払いシーンや儀礼的な支払いにおけるキャッシュレス決済と現金の利用状況、および将来の利用意向を探ることを目的としています。調査データは2024年の国内キャッシュレス決済比率が42.8%を超えると予測される中、その実態を鋭く浮き彫りにしました。
日常シーンでの利用意向
約7割以上が、キャッシュレス決済を利用したいと考えています。特に、食事の分担や友人への金銭授受のシーンで、若年層がキャッシュレスに移行していることが明らかになりました。特に20代や30代では、飲み会やランチの際にキャッシュレスを選ぶ傾向が高く、この世代におけるキャッシュレス利用の普及が進んでいる様子がうかがえます。
冠婚葬祭でのキャッシュレス利用
冠婚葬祭においては、現金の使用が未だに根強いのは事実ですが、調査結果によると約3割以上がキャッシュレスでの支払いを選択する意向があることがわかりました。年齢層によって異なる意識が見られ、特に若年層はキャッシュレス決済に対して積極的であることが確認されました。結婚式のご祝儀や葬儀の香典といった儀礼では伝統的慣習が影響を及ぼすものの、技術の進歩がこの慣習を変えていく可能性があります。
現金派の理由
冠婚葬祭シーンでは、現金を選ぶ理由として「伝統的な慣習」が挙げられました。この慣習はお金の受け渡しが価値の移転以上のものであり、文化的・情緒的な側面が強いことを示唆しています。しかし、キャッシュレス派では「現金の用意が面倒」という理由が主な選択肢となっており、利便性が重視されつつあることがわかります。
日本におけるキャッシュレスの未来
今後、日本社会においてキャッシュレス決済がさらに普及していくことが予想されます。経済産業省の報告によれば、2024年にはキャッシュレス決済比率が42.8%を超えるとされ、2030年には80%を目指す動きが進められています。この背景には、効率性や利便性を求める消費者のニーズだけでなく、環境整備や金融包摂といった社会的課題への取り組みも含まれています。
有識者の見解
東洋大学の教授である川野祐司氏は、今回の調査結果を受けて、儀礼的なイベントでの慣習重視の傾向について言及しています。彼は、キャッシュレスの普及が進むなかでも、現金には独自の重要性があるとの見解を示しました。特に感情的価値において現金の役割は無視できないとし、今後もキャッシュレスと現金が共存しながら社会を支える形になると予想しています。
結論
調査結果は、日本におけるキャッシュレス決済の浸透具合を示しており、特に若年層の意識が変化していることが明らかになりました。日常生活や冠婚葬祭のシーンにおけるキャッシュレス利用の増加は、今後の日本社会における経済活動や文化的慣習に影響を与える要因として注目されます。私たちの価値観が変わりつつある中で、キャッシュレス社会の成長に期待が寄せられます。