富士山精進口登山道でメディア向けファムトリップ体験
2023年11月10日、山梨県は富士山精進口登山道でメディア向けのファムトリップを開催しました。このイベントには約30名の参加者が集まり、古の登山道を歩きながら、富士山が持つ文化的な意義を理解し、地域の歴史に触れる機会が提供されました。昨今のオーバーツーリズム問題に対処すべく、伝統的な登山道の価値を再認識し、分散化を促進することが目的です。
開会式と富士山の文化的意義
ファムトリップは、ふじてんスノーリゾートでの開会式からスタートしました。山梨県観光文化・スポーツ部の髙津太郎政策企画監は挨拶の中で、伝統的な登山体験を知ることで地域の発展が図れると強調しました。続いて富士河口湖町教育委員会の杉本悠樹学芸員が登山道の歴史を紹介。精進口登山道は大正期に林業用道路として開かれたもので、豊かな自然環境が保存されていることを説明しました。その後、参加者は「富士山レンジャー」の指導のもとで安全登山の講義を受け、いよいよ天神峠からの出発を果たしました。
貞観大噴火の痕跡を辿る
初めに参加者が訪れたのは、貞観大噴火によって形成された氷穴火口。この噴火は青木ヶ原樹海の基盤を築いたもので、その巨大な火口の中で溶岩流がいかにして形を変えたかを間近で観察しました。参加者はその壮大さに驚嘆し、自然の力を実感しました。
歴史的道「若彦路」と大室山
次に向かったのは、天神峠と大室山を結ぶ重要な歴史的道「若彦路」。ここは江戸時代から巡礼道として位置づけられており、古の信仰が息づく場所です。参加者は大室山へ向かう途中で、昔の産業遺構も目にしつつ、森の変化を楽しみました。杉本学芸員の説明によると、火山噴火によって形成されたスコリアが土壌の特性に影響を与え、植生の多様性を生んでいるとのことです。
大室山の植生に触れる
ゆるやかな下り道を進む中、参加者たちは植生の変化に気付きました。広葉樹から針葉樹への移り変わりを感じ取る中で、森の声に耳を傾け、自然の大切さを新たに認識します。大室山の周囲では、歴史的な木々の姿も見ることができ、結果として地域の宝として残すべき価値ある自然環境であることを理解しました。
富士風穴の重要性とその歴史
ファムトリップのフィナーレは「富士風穴」。ここは明治時代から養蚕業の重要な役割を果たしてきた、天然の冷蔵庫です。年間を通じて低温を保つ特性があり、蚕の卵を保存するために広く利用されていました。参加者はその歴史と共に、地元の産業に寄与してきた事実を学ぶことができました。
参加者の感想
ファムトリップを終えた参加者の一人は、「富士山の麓を歩くことで、雄大な自然と地域の文化的な意義を深く感じることができた」と振り返ります。このような体験を通じて、大切な伝統を理解し、新たな視点を得ることができたようです。
未来への期待
現在、山梨県では古い登山道に関する研究を進め、その結果を基に地域経済を発展させる取り組みが予定されています。このファムトリップをきっかけに、多くの人々に富士山の持つ文化的価値を広めていくことが期待されています。