高額療養費制度の引き上げががん患者に与える影響
2023年6月5日、パルシステム共済生活協同組合連合会がオンラインで開催した学習会では、高額療養費制度の引き上げによる影響が議題となりました。主に、ステージⅣの肺腺がんと闘う水戸部ゆうこさんの体験を通じて、多くの人々が直面する現実が語られました。
水戸部さんの闘病記
水戸部さんは、2018年に小学校に通う2人の子どもを抱えながら、肺腺がんの診断を受けました。抗がん剤治療がスタートし、その高額な治療費と副作用により、彼女の日常は急激に変わり始めました。抗がん剤は1錠2万円と高額で、当然ながら経済的な負担も大きく、仕事を続けることは難しく、半年間で離職せざるを得ませんでした。彼女は自分の病気だけでなく、父親の食道がんの看取りも経験し、精神的にも多くの試練を乗り越えてきました。
社会とのつながりを求めて
治療を続けていく中で、水戸部さんは同じ状況にある人々との交流を求めるようになりました。苦しみを共有できる仲間を探していた彼女は、オンラインのサポートグループに参加し、同時に働きたいという思いから仕事にも復帰しました。しかし、その後抗がん剤による耐性が見つかり入院することになりましたが、病院内でも仕事を続けつつ、治療体験を通じて得た知識を社会に還元することを決心しました。
がんサロンの設立
2022年には「がんサロン」を設立し、同じ悩みを持つ人たちに寄り添う居場所を提供しました。このサロンでは、参加者が自由に自分の思いを話し合い、がんを「自分ごと」として受けとめることのできる社会を目指しました。水戸部さんのような方が身近にいることで、他の患者たちも勇気を得ることができたのです。
高額療養費制度の引き上げと影響
しかし、2024年12月に報じられた高額療養費制度の限度額引き上げが、ガン患者にとって深刻な問題になっています。この制度は医療費の負担を軽減するためのものですが、限度額が上がることは、長期にわたって治療を受けなければならない患者にとっては死活問題です。水戸部さんは子どもたちの受験も控えており、自身の治療費が家計に与える影響に悩んでいます。
子どもを持つがん患者を対象にした調査では、引き上げがあれば治療を諦めるという声もありました。水戸部さん自身も、国会でのヒアリングや厚生労働省での記者会見を通じて、制度の見直しを訴えました。地域の仲間たちと共に進めたオンライン署名は58,154件の賛同を得ました。
今後の展望
水戸部さんの活動により、2025年8月の引き上げは見送りになりましたが、現状は依然として白紙撤回には至っていません。彼女は、「一人のがん患者が政治に関わるとは思っていなかった。多くの賛同と支えに感謝し、これからも社会を変えていきたい」と話します。
がんに対する啓発活動
日本では生涯のうち2人に1人が何らかのがんに罹患すると言われています。早期発見や治療についての知識が欠かせない中、パルシステムグループは「がんに関する啓発アクション」を展開しています。今後もがん患者の声を聞き、誰もが暮らしやすい社会の実現に向けて活動を続けることが期待されています。