ファインセラミックス業界に向けた革新技術の開発
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と国立研究開発法人産業技術総合研究所、通称産総研は、ファインセラミックスの製造プロセスを革新する取り組みを進めています。特に、スラリー中に含まれるサブミクロン粒子の乾燥挙動を実際の乾燥環境で観察可能にした画期的な技術を開発しました。
この技術は、ファインセラミックスのプロセス・インフォマティクス(PI)の構築を目指すもので、製造過程における計算科学や先端測定技術を駆使しています。これまでの製造工程は経験則に頼る部分が多く、効率的ではありませんでした。そこで、本事業を通じて、全ての製造工程をカバーできる新たな基盤の構築を目指すと同時に、スラリーの乾燥挙動を詳しく可視化することが求められました。
開発の背景と技術の概要
ファインセラミックスの製造プロセスでは、スラリーの乾燥挙動が寸法や密度に大きな影響を及ぼします。これを評価するためには、スラリーの実際の乾燥環境における粒子の動きや挙動を観察する必要がありますが、これまでの手法では真空環境や電子線照射下での測定が不可欠でした。
新たに開発された技術は、レーザー顕微鏡と粒子画像流速測定法(PIV法)を用いたものです。大気圧下の実際の乾燥環境で、サブミクロン粒子の動きをリアルタイムで観察し、定量分析できるため、従来の手法に比べて飛躍的に精度が向上しました。この技術により、乾燥過程における粒子の挙動を可視化し、詳細なデータを収集することができます。
技術革新がもたらす変化
開発した技術の最初の成果物は、セラミックススラリーをレーザー顕微鏡でオペランド観察することで、乾燥過程における粒子の動きを動画で記録し、PIV法による直接評価が可能になったことです。これにより、粒子の移動速度や移動方向の違いを明確に分析することができ、さらなる理解が深まりました。
また、相対湿度がサブミクロン粒子の乾燥挙動に与える影響についても詳細に定量化しました。異なる湿度条件での乾燥動態を比較することで、湿度が低いほど粒子の移動速度が増し、膜厚の収縮が早く進むことが確認されました。これらの成果は、製造プロセスの最適化に寄与することが期待されています。
今後の展望
今後は、開発した技術を用いてさらなる研究を進め、様々な組成や粘度をもつスラリーやペーストにおける検証を行う予定です。この新技術は、スラリーの乾燥プロセスの最適化や配合設計の精密化に寄与し、ファインセラミックス製造プロセス全般における品質向上とコスト削減を実現する可能性があります。
また、これらの研究成果は、2026年5月19日に学術誌『Journal of the Ceramic Society of Japan』に発表される予定です。将来的には、この技術がファインセラミックス業界に一層の革新をもたらすことが期待されています。
本技術の進展により、ファインセラミックス分野の製造工程に新たな道が開かれ、より高品質な製品の生産に寄与することが望まれます。