日本の眼科医におけるジェンダー格差:仕事と生活の両面から迫る現実
近年、女性の社会進出が進む中、医師という職業においてもジェンダー格差が依然として存在する現実が浮き彫りになっています。特に、リーダー層における女性の少なさは大きな課題です。この問題に対し、比較的女性医師の割合が高い眼科医の世界を対象に、仕事と生活におけるジェンダー格差に関する調査が行われ、その結果が学術誌『Medicine』に掲載されました。
調査概要:日本白内障屈折矯正手術学会によるアンケート調査
公益社団法人日本白内障屈折矯正手術学会(JSCRS)は、会員1721名(男性1344名、女性377名)を対象にオンラインアンケートを実施。年齢、性別、職種、家族構成、労働時間、年収、家事育児分担、仕事の満足度など、多岐にわたる40項目の質問に回答を求めました。有効回答数は219名(男性144名、女性75名)でした。
調査結果:明らかになった男女間の格差
調査の結果、眼科医の仕事と生活において、男女間で顕著な格差があることが判明しました。
職種、労働時間、年収の差: 職種、労働時間、年収には男女間で大きな差が見られました。詳細な数値は公開されていませんが、女性の医師の方が労働時間が短く、年収も低い傾向にあると推測されます。
家事・育児・介護の負担: 女性医師は、男性医師に比べて家事、育児、介護においてより大きな責任を負っていることが示されました。一方、男性医師の配偶者の多くは専業主婦か、パートタイム勤務で、収入が低く、家庭での負担が大きい傾向が見られました。
キャリアへの影響: 女性医師は、男性医師と比較して出産後に仕事の変更を行う頻度が高いという結果が出ました。これは、育児や介護との両立の難しさからキャリアプランを変更せざるを得ない状況を反映していると考えられます。
職業選択への満足度: 男女ともに眼科医という職業選択には高い満足度を示していました。しかし、将来、子供や学生に眼科医を勧めたいと思う割合は、女性医師の方が男性医師より低いという結果が示唆されました。
ジェンダー格差の背景と課題
これらの結果から、日本の眼科医の世界においても、家族に対する責任分担の偏り、キャリアにおける選択肢の狭さなど、ジェンダー格差が依然として存在することが明らかになりました。
この調査は、医学界におけるジェンダー格差の問題を改めて浮き彫りにし、より働きやすい環境を作るための対策の必要性を示唆しています。今後の対策として、育児休暇制度の充実、保育施設の整備、柔軟な働き方の推進、男女間の公平な責任分担の促進などが考えられます。
今後の展望
今回の調査は、眼科医という特定の職種に焦点を当てたものではありますが、日本の医療界全体におけるジェンダー格差問題を考える上で重要な示唆を与えてくれます。今後、より広い範囲での調査や、具体的な政策提言へと繋がることを期待したいです。より多くの女性医師が活躍できる環境を整えることで、医療の質向上にも繋がると考えられます。
参考文献
* Gender-based differences in the job titles and work-life balance of ophthalmologists in Japan. Medicine (Baltimore). 2023 Oct 6;102(40):e35285. https://journals.lww.com/md-journal/fulltext/2023/10060/gender_based_differences_in_the_job_titles_and.71.aspx