広島県東広島市に拠点を置く株式会社マテリアルゲートが、新たな技術革新を目指している。このスタートアップは、広島大学の西原禎文教授によって開発された画期的な機能性材料『単分子誘電体』を用いた低消費電力メモリの実現を目指している。この度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のGX分野におけるサポート事業に採択されたことが発表された。このプロジェクトは、STS(Seed-stage Technology-based Startups)フェーズに選ばれ、素材の量産への道を切り開くことが期待されている。
単分子誘電体とは
この『単分子誘電体』は、従来の物理学の概念を覆す特性を持っており、これまで強誘電性を持たないとされていた単一分子において、自発分極や分極ヒステリシスといった強誘電体特有のメモリ効果を示すという。これにより、メモリデバイスに新たな可能性をもたらし、約1000倍の密度化と90%の消費電力削減が期待される。
強誘電体とは、自発的に電気的な分極を示し、その極性が外部の電場によって反転する特性を持つ材料であり、情報記録など多様な電子デバイスに利用されている。この単分子誘電体材料が実用化されることで、従来のメモリ技術に大きな進歩をもたらす可能性がある。
NEDO GX事業の意義
NEDOのGX事業は、日本国内外で解決すべき社会課題に対する革新的な技術の実用化を促進することを目的としている。特に、ディープテック・スタートアップに焦点を当てた支援が行われ、プロジェクトの成功に向けた研究開発・量産化の実証が進められる。マテリアルゲートの取り組みは、単分子誘電体の製造プロセスの構築やサンプルメモリデバイスの実用化を目指す。
企業概要
株式会社マテリアルゲートは2023年6月に設立され、 広島大学のインキュベーションオフィスからスタートを切った。同社は単分子誘電体の製造やデバイス開発を通じて、これらの新材料の社会実装を進めている。代表取締役の中野佑紀氏は、革新的な技術で世の中に貢献することを掲げ、この技術が実用化されることで多くの利益をもたらすと考えている。
今後の展望
今後の技術開発においては、単分子誘電体の特性を最大限に引き出し、さらなる高性能メモリ開発を目指していく計画だ。企業の公式サイトでは、最新情報や新たな資金調達プロジェクトについても発表されており、業界の注目を集めている。これにより、広島大学発のスタートアップが生み出す技術が、世界的にメモリ技術を革新させる原動力となることが期待されている。