サゴタニ牧農がグッドデザイン金賞を受賞
広島市佐伯区湯来町にあるサゴタニ牧農(砂谷株式会社)が、2025年度のグッドデザイン金賞を受賞しました。これは同社の「酪農のあるべき姿とは何か?」という問いから派生した取り組みの一環で、地域との協働を通じて新しい酪農の形を探求するプロジェクトに対する評価です。
恵まれた自然環境との共生
サゴタニ牧農は、戦前から続く伝統的な酪農業を営み、コロナ禍を機に放牧酪農にシフトしました。これにより、「暮らしと命がつながる酪農」の価値を再設計し、持続可能な地域の未来を考えています。放牧地や体験農園、交流拠点を整備するとともに、新たにデザイン面から理念を可視化。これにより、地域の人々の意識を高め、酪農の新しいスタイルを提案しています。
「人・牛・自然の循環」を重視
特に強調されているのは、牛にも人にも優しい放牧への転換。段階的な放牧酪農を実践することで、牛と自然との関係を再構築し、地域の人々とも協力し合っています。牛が草を食み、堆肥が土を肥やし、その土で草が育つ。この自然の循環が、すべての生き物にどのような影響を与えるのかを地域の人々と共に考え、体感する場を提供しています。
受賞の背景とその意義
受賞対象としてのプロジェクトは、単なる酪農の形を変えるだけでなく、食と命のつながりを考える重要な契機です。2020年から始まった放牧酪農への転換は、日本の食料自給率が38%に低下し、食品ロスが600万トンに達する時代背景の中で、食が命から離れている現状を見つめ直すきっかけとなります。
彼らの取り組みは、ただの生産活動にとどまらず、農業の持つ本質的な価値と未来を感じる場所を創出するものです。それは、地域社会とのつながりを深め、他の生産者や消費者との新しい関係性を築くことへの挑戦でもあります。
地域全体を巻き込む取り組み
サゴタニ牧農は、地域の人々と共に放牧地を造成し、延べ500名を超える協力者とともに新しいコミュニティを形成してきました。さらに、クラウドファンディングを通じて支援を集め、売店や休憩所を整備。地域産品のマーケットや、イベント、体験農園のプログラムを通じて、地域全体を巻き込む多様な交流の場を提供しています。
未来へのビジョン
ただし、酪農業の未来は厳しい状況に直面しています。気候変動や輸入飼料の高騰により、離農が増加する中で、サゴタニ牧農もその影響を受けています。だからこそ、彼らは酪農の本来の意味と美しさを再認識し、それを地域社会や環境と結びつけていくための努力を続けます。「地域に牧場があって良かった」と思える未来を願い、仲間たちと共に新しい道を切り開いていく決意を示しています。
デザインの力量
サゴタニ牧農のデザインを手掛けたUMA/design farmは、地域や文化に寄り添ったサスティナブルなデザインを実践するデザインオフィス。グッドデザイン賞の他にも数々の栄誉を持つ彼らが手掛けるロゴやパッケージには、一次産業や地域の未来に向けた強いメッセージが込められています。デザインを通じて、消費者の新たな気づきを促し、地域に根ざした酪農の重要性を伝えていく姿勢が高く評価されています。
さあ、サゴタニ牧農の取り組みを通じて、酪農の未来や私たちの食に対する意識を考えてみませんか?