日本美術の深い世界を探る
大人のための文化と教養を提供する『サライ』の最新号(2025年9月号)は、創刊35周年を記念した特別号として「くらべる ならべる 日本美術」をテーマにしています。この号では、江戸時代の二大巨匠、伊藤若冲と円山応挙の作品を比べることで日本美術の「真価」を掘り下げています。
特集内容の概要
特集では、三つの大きなテーマ「奇想と王道」「いきものたち」「浮世絵と西洋絵画」が設けられ、作品同士の対比を通じて各画家の異なる視覚体験を紹介。作品を比較することで各画家の個性やスタイルの違いを浮き彫りにし、より深い理解へと導きます。
伊藤若冲と円山応挙
特に「奇想の王者」と呼ばれる若冲と、「王道」を代表する応挙の共演は必見です。両者が合作した屏風を通じて、画題におけるアプローチや筆の運びの違いを丹念に分析。美術史家の山下裕二さんによる解説により、静と動の対比も明確に示されています。若冲の作品には躍動感が、応挙の作品には静謐な美が宿り、それぞれの個性がいかに際立っているかを感じることができます。
江戸の「いきものたち」
また、特集の中の「いきものたち」では、江戸時代に流行したペット文化に焦点を当て、漫画的なスタイルで描かれた犬や猫、さらには金魚や鳥など、当時の庶民がどう動物たちに愛着を持っていたかを浮世絵を通して表現。この章では、歌川国芳や長谷川等伯などの作品を比較し、当時の生活の豊かさと自然との調和を伺い知ることができます。
浮世絵と西洋絵画の交流
さらに、特集の後半では、浮世絵がどう西洋絵画に影響を与えたかを探ります。19世紀の「ジャポニスム」により、多くのヨーロッパの芸術家が浮世絵に魅了され、特に、歌川広重とクロード・モネの作品を並べてその違いや共通点を分析します。浮世絵の特異なスタイルや色彩は、西洋のアートシーンに新たな風を吹き込み、西洋のアーティストたちがどのようにその影響を受け取ったかを読み解きます。
若冲と応挙の「虎図」
特集には、二人の「虎図」に関する大画面の引き出し付録もあり、細かな描写まで際立ったサイズ感で楽しむことができます。彼らは実際の虎を見たことがないにもかかわらず、その毛並みの表現や動物に対する愛情を画面から感じ取ることができます。
ワイン特集も見逃せない
また、美術だけでなく、特集「旨くて手ごろなワイン」では、近年の気候変動や新たな作り手の登場に伴うワインの選び方の変化を探ります。デイリーワインを選ぶコツや料理とのペアリング提案など、幅広い知識を提供しています。
インタビュー記事
最後に、昆虫写真家の海野和雄さんへのインタビューも充実しており、彼の長年の活動や今後のビジョンについて知ることができる貴重なページも収められています。
この特別号は、日本美術の世界を新たな視点で捉える絶好の機会です。ぜひ手に取って、その深みと魅力を存分に堪能してみてください。発売日は2025年8月8日、特別価格1100円(税込)で、小学館からのリリースです。