三菱電機株式会社は、次世代の光ファイバー通信に新たに対応した受信用光デバイスの開発に成功し、2024年10月1日からそのサンプル提供を開始することを発表しました。この光デバイスは、800Gbps及び1.6Tbpsの非常に高い通信速度を実現することができ、データセンターを中心とした高速なデータ通信環境に貢献することが期待されています。
「800Gbps/1.6Tbps光ファイバー通信用200Gbps pin-PDチップ」という名称のこの新製品は、データセンター向けの光トランシーバーに搭載される受信設備として設計されました。IoT技術の進展に伴い、ネットワークに接続される端末の数が急増し、高解像度映像のストリーミングやAI技術の使用が広がる中、通信データ量は飛躍的に増加しています。このような状況では、高速かつ大容量の通信がかつてないほど求められています。
特にデータセンター市場では、従来の400Gbpsから次世代の800Gbpsや1.6Tbpsへ移行が進んでいます。特に生成AI用のハードウェアが増えているため、通信経路を高いパフォーマンスで切り替えられる光トランシーバーの需要は高まっています。しかし、受信用の光デバイスに関しては、十分な性能を持つ製品が市場に少なく、今までの通信パフォーマンスを向上させる大きな課題となっていました。
三菱電機の新しい200Gbps pin-PDチップはこの問題を解消することを目指しています。このチップは、裏面入射型構造と凸レンズ集積構造を採用しており、これにより光電変換の領域を最小限に抑え、高速動作を実現しています。これにより、1台の光トランシーバーに4つのこのPDチップを搭載することで800Gbps、さらに8つ搭載すると1.6Tbpsでの通信が可能になります。
また、この新しいPDチップの設計は、製造プロセスにも大きな効率化をもたらします。凸レンズ集積構造によって受光面積が約4倍に拡大され、入射光がわずかにずれても受光できるようになり、高精度な調整が不要となります。これにより光トランシーバーの組み立て作業が効率化され、さらに製造コストの削減も期待されています。
新製品の仕様では、感度は0.60A/W、帯域は60GHz、チップサイズは0.38×0.36×0.15mmとされています。また、このPDチップはRoHS指令にも準拠し、環境にも配慮されている点も特筆です。
三菱電機は、この新しい光デバイスがデータセンターの通信の高速化と大容量化に寄与することで、次世代のネットワークインフラの構築に大きく貢献することを期待しています。今後もこの分野におけるさらなる技術革新が進むことが望まれます。