村井亮太さんが国際会議で受賞
2025年7月、東京工芸大学の村井亮太さんは、韓国のソウルで開催された「The 40th International Technical Conference on Circuits/Systems, Computers, and Communications (ITC-CSCC 2025)」において、競争の激しいWEIE Workshop部門でBest Paper賞を受賞しました。この栄誉ある賞は、同部門に提出された全ての論文から厳密な審査を経て選ばれたものです。
研究の背景と目的
村井さんの受賞した論文は、「Temporal Localization and Recognition of Japanese Fingerspelling Using Hierarchical Reliability Propagation」というタイトルで、聴覚障害者にとって重要なコミュニケーション手段である日本手話の指文字の時間的局在化と認識に関する研究成果を発表したものです。日本の手話における指文字は、多くの聴覚障害者にとって日常のコミュニケーションに欠かせない要素ですが、これをコンピュータに自動認識させる技術の開発は難しい課題でした。
画期的なアプローチ
従来の手法では、動画内の手話動作を正確に特定するためには膨大な量の詳細な注釈データが必要でしたが、村井さんの研究では「点レベル注釈」という手法を導入することで、作業量を従来の10分の1に減少させつつ高精度な認識を実現しました。さらに、手の関節角度情報と最新の深層学習技術を組み合わせることで、認識精度は30%以上向上しました。
この技術は、手話通訳支援システムや聴覚障害者向けの教育ツール、リアルタイム翻訳システムなど、多岐にわたる応用が期待されており、インクルーシブ社会の実現に向けて大いに貢献することが見込まれます。
大会の意義
今回の大会は、40周年を迎えた国際的な科学技術に関する重要なイベントであり、大韓電子工学会や中央大学、電子情報通信学会などが主催しています。このような国際的な場での発表や受賞は、村井さんの研究が世界的にも注目されていることを示しています。
指導教員の評価
村井さんの研究を指導した姜有宣教授は、村井さんが入学時から社会的な重要テーマである手話認識に真剣に取り組んできたことを強調し、ただ技術的な改良を追求するだけでなく、実用性と効率を兼ね備えた革新的なアプローチを提案してきたことを評価しています。また、日本初の包括的な日本語指文字データベース「ub-MOJI」の構築も特筆すべき点です。このデータベースは一般に公開され、多くの研究者にとって貴重な研究資源となることでしょう。
今後の展望
村井さんの今回の受賞は、彼の情熱と継続的な努力の結晶であり、今後はこの研究成果とデータベースを活用して聴覚障害者のコミュニケーション支援技術の実用化に向けた研究を続けていく予定です。村井さんには、この分野のリーダーとしての成長が期待されています。専門家として、また研究者として社会課題の解決に貢献できることを私たちも期待しています。
ITC-CSCC 2025公式サイト
東京工芸大学公式サイト