南海トラフ地震を見据えた今治市の取り組み
愛媛県今治市が、南海トラフ地震を想定してドローンによる医療物資の輸送実験を行い、その成果を発表しました。この実験は、今治市内の「近未来技術実証ワンストップセンター」との協力によって実施され、実際の医療ニーズに応える新たな輸送手段を探るためのものです。
実証実験の背景
今回の実証実験は、南海トラフ地震によって、今治市からしまなみ海道沿線の島しょ部が孤立する事態を想定しています。地震の影響で来島海峡大橋が通行できなくなる場合、迅速に医療品や手術器具を空から届けることができるかを検証することが目的です。これにより、災害時における医療支援の即応性を向上させることが狙いです。
実験の詳細
実験は2025年10月28日に行われ、今治市内の砂場スポーツ公園から離陸し、大島の海宿千年松キャンプ場までの約4kmを飛行しました。飛行は高度100mで行われ、速度は10m/s、輸送時間はわずか10分です。ドローンによって運ばれた医療品は、注射器や輸血セットなど、約1kgの荷物でした。ドローンは自動飛行しつつ、オペレーターによる安全監視のもとで行われました。
従来の輸送手段との差別化
この実証実験の結果、ドローン輸送は陸上輸送よりも短時間で医療物資を長距離届けることができることが確認されました。特に今治市は多くの有人島があるため、「空の輸送ルート」が有効であると再評価されています。齋藤院長もこの実験を受け、「具体的な医療体制を確保するためには、迅速な輸送手段が不可欠」とコメントしています。
今後の展望
今治市は、国家戦略特区としてさまざまな技術の実証実験を支援しており、ドローン輸送以外にも、自動運転やAI・IoTの分野についても取り組みを進めていく方針です。今後は「近未来技術実証ワンストップセンター」を通じて、災害対応以外にも幅広い分野へのドローン活用を推進し、全国展開可能なモデルを構築していく予定です。
このような取り組みにより、災害時の医療支援体制が充実し、地域住民の安全と安心の向上が期待されています。