鯨がもたらす健康の新たな可能性
2025年9月25日、厚生労働省記者クラブで行われた記者発表会において、一般社団法人日本捕鯨協会(理事長:谷川尚哉)が新たな研究成果を披露しました。この研究では、鯨肉と鯨油が持つ健康増進機能、特に「フレイル」(心身の虚弱)予防の可能性が注目されています。
発表の内容
発表会には、湘南医療大学薬学部の塩田清二教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の矢澤一良先生、そして共同船舶株式会社の所英樹社長が登壇し、最新の科学的知見について説明が行われました。特に所社長は、持続可能な捕鯨が日本の食文化を守り、未来の水産業を切り拓く重要性を強調しました。
鯨肉に含まれるバレニンの効果
塩田教授は、バレニンという成分に注目しました。これは鯨肉に含まれるイミダペプチドで、抗酸化作用が高く、臨床試験によって持久力の向上や自律神経の調整、さらには睡眠の質の改善が確認されています。また、高齢者においては認知機能や集中力の上昇、抗ストレス、抑うつの改善も見られることが報告されています。
鯨油の機能性
矢澤先生は、鯨油に含まれるDPA、EPA、DHAなどのオメガ3脂肪酸が生活習慣病予防に有効であることを述べました。これらの成分は中性脂肪や脂肪肝の改善に寄与することが動物及び人における試験で確認されており、さらなる応用の可能性も示されています。
繋がるフレイル予防
これらの結果は、全世代にわたるフレイル対策としての「マリンビタミン」の実践を促すものであり、抗疲労成分や抗酸化作用を活かした新しい健康コンセプトが提案されました。生活習慣病やフレイルの予防として、鯨肉と鯨油の食用価値は見逃せないものとなっています。
発表に寄せられた期待
谷川理事長は、「鯨食文化は伝統だけでなく、環境、健康、経済に貢献する持続可能な資源である」と述べ、鯨肉の健康機能性を科学的に証明することの重要性を訴えました。一方、所社長は、鯨肉がもたらす食文化の再認識と、若い世代への鯨の価値再教育が必要であると強調しました。
鯨の持続可能な利用
鯨資源の持続可能な利用についての見解も示されました。過剰な鯨の保護が漁業資源の減少やアニサキスの増加を引き起こす可能性があり、適切な捕鯨が海洋資源の循環利用と食文化の安全性を確保するために重要です。
まとめ
これらの研究発表は、鯨肉や鯨油の健康効果を再評価する重要な契機となりました。海洋資源を有効に活用することで、持続可能な循環型社会が実現されることを期待しつつ、今後の研究の進展に注目が集まります。これからも、鯨由来成分の健康効果の探求が続くことが求められています。