触感で広がる新たなコミュニケーションの世界
2023年7月3日、東京都新宿区に本部を構えるパルシステム共済生活協同組合連合会は、「触覚で遊ぶワークショップ」を開催しました。これは、視覚に障害を持つ方々と連携し、触感の大切さを学ぶ貴重な機会でした。神奈川県葉山町にあるユニバーサル絵本ライブラリーUniLeafの大下利栄子代表の支援のもと、参加者は視覚に頼ることなく、触覚を使った情報の取得に挑戦しました。
シンプルなアイマスクから始まる体験
ワークショップは、参加者全員がアイマスクを装着することから始まりました。これにより、視覚が遮られた状態で触覚に集中する環境が整えられました。大下さんの先導で、まずは立体的な模様が施されたカードを用いて、参加者が互いに手探りでカードを選び、模様を確認し合うゲームが行われました。
この活動を通じて、参加者からは「右手と左手では触った感触が違う」「目で見ていると違っても、触ると同じに感じる」という様々な気づきが報告されました。これにより、視覚障害者とのコミュニケーション方法について深い理解が促されたのです。
点字に触れることで得る理解
続けて、参加者は点字についての説明を受け、その実物に指を触れました。一文を読み進めるために行をなぞり、目には見えない情報を確認する難しさを体験します。このような体感を通じ、視覚情報がどれほど日常生活で重要であるかを再認識しました。大下さんは、視覚に頼らずに学べる点字の重要性を強調し、共に生活する人と支え合うことで多くのことが可能になると伝えました。
新たな「触る」体験の提供
このワークショップは、ユニバーサル絵本を中心に構成されており、市販の絵本を解体し、物語の点字版を透明シートで挟んで再製本したものを使用しています。これにより、視覚に障害がある人とない人が同じ絵本を楽しみながら、お互いの世界を理解し合うことができるのです。
大下さん自身も、視覚障害のある娘さんのために、点字の本があれば共に物語を楽しむことができると気づき、2008年からこの活動を続けています。彼女は、地域でも触覚を利用した体験を提供することを目指し、鎌倉で「建長寺さわる模型」プロジェクトを立ち上げ、成功を収めています。
地域に広がる理解
パルシステムの取組みは、単に一回限りのワークショップにとどまるものではありません。参加者は得た体験を所属組織で共有し、各地でのイベントの開催を計画しています。これにより、共生社会の重要性が更に広がっていくでしょう。
また、パルシステムの「ささえあい基金」は、障害者や生活困窮者を支援するための助成金制度で、互いに支え合う地域社会づくりに力を入れています。この活動を通じて、視覚に障害のある人々を含む多様な個人が共に生活しやすい社会を形成し、地域に根差した支え合いの関係を築くことが期待されます。
これからもパルシステムは、様々な立場の人々との連携を通じて、持続可能な地域社会の実現を目指していきます。