AI模擬患者による問診シミュレーション「OPQRST」が医学教育に革新をもたらす

千葉大学発のスタートアップ企業、株式会社OPQRSTは、医療者の問診スキルを向上させることを目的とした新しいWebサービス「OPQRST」を開発しました。この取り組みは、医療提供を受ける患者がより安心できる環境を整えることを目指しています。

OPQRSTの目的と特長

「OPQRST」は、生成AI技術を駆使した“AI模擬患者”とのシミュレーションを可能にするソフトウェアです。特に、医療者と患者とのコミュニケーション能力の向上が求められる現代において、学生たちが実践的な経験を積むための場として期待されています。問診や医療面接は医療行為の基礎であり、ただの情報収集にとどまらず患者との信頼関係を築く重要なスキルなのです。

医学教育が抱える課題

現在、医学部生が実際に模擬患者との対話を通じてそのスキルを磨く機会は非常に限られています。公的な医学試験、OSCE（Objective Structured Clinical Examination）は、学生が臨床能力を評価される唯一の試験ですが、その運営には模擬患者ボランティアの確保が必要であり、負担が大きくなっています。実際、全国の医学部に通う75大学の内、98.6%が「模擬患者の確保」に関して問題を抱えていると報告されています。これは、医療模擬システムのデジタルトランスフォーメーション（DX）が急務であることを示しています。

OPQRSTの革新性

株式会社OPQRSTは、千葉大学医学部附属病院の臨床医留意点を最大限に活かし、リーダーシップを発揮する現役医師によって設立されました。代表取締役社長の栁田育孝氏や取締役の横川大樹氏は、医療現場での豊富な経験を持ち、診断の難しい症例に直面する患者の支援を行っています。彼らは、臨床技術に基づいたシステムの精度向上を重視しており、特に問診技術を磨くためのシミュレーションに注力しています。

シミュレーションの詳細

「OPQRST」では、模擬患者との対話を通じて、学生がリアルタイムでフィードバックを受けられる機能が搭載されています。AI模擬患者は「口数の多さ」や「協力的かどうか」といったパラメータに基づいて多様な性格を持ち、実際の医診断に近い状態でのシミュレーションが行えます。

開始当初から47種類の疾患に対応した症例が用意され、今後もさらなる追加が予定されています。これは、学生にとって単に情報を収集するだけでなく、患者とのコミュニケーションを通じて感情や文脈を理解する能力を高めるために最適です。

将来の展望

OPQRSTは2022025年4月にサービスを開始予定であり、音声入出力や学習経過管理システムの追加、さらにはVR技術によるサービス展開も計画されています。未来の医療を担う人材育成に向け、全ての医療者に問診力を育むための道筋が示されています。現代の医学教育における重大な課題を解決するための旅が始まるのです。

このように、株式会社OPQRSTは医療現場における教育方法を一新し、より良い医療提供に寄与することを目指しています。これからの医療界において、どのようにこの技術が役立つのか注目が集まります。