企業と社会をつなぐ「事業を通じた社会課題解決」の実態
身近な社会課題が企業にとって重要なテーマとして浮かび上がってきています。株式会社日本総合研究所が実施したアンケート調査によれば、現在の企業が直面する課題について、特に「事業を通じた社会課題解決」の取り組みが注目されています。
調査の背景と目的
昨今、企業は社会的責任を果たすことが求められています。環境問題や人権問題、地域社会への貢献など、多様な期待に応えなければならない状況です。それに伴い、企業がこのような社会課題の解決を本質的な経営課題として位置づける動きが増加しています。このような背景から、本調査が実施されました。調査対象は全国の上場企業で、その回答を通じて企業の取り組みや意欲、必要とする支援についての情報が収集されました。
調査概要
- - 調査期間: 2024年8月2日~9月6日
- - 調査方法: ウェブアンケート
- - 対象企業: 全国の上場企業2,000社の経営企画部門
- - 回答数: 127社 (回答率6.4%)
調査結果の概要
■ 企業の関心の高さ
調査結果によりますと、回答企業の62.2%が「事業を通じた社会課題解決」に関心を持つとし、約4割が実際に何らかの形で取り組んでいることが明らかになりました。具体的には、41.7%の企業が社会課題解決に向けた企業との戦略的連携、39.4%がCVCやインパクト投資に関与しているとの回答が得られ、企業の関心の高さが伺えます。
■ 長期的視点からの効果
多くの企業が「事業を通じた社会課題解決」による自社への効果を肯定的に捉えています。「長期的な成長」「企業ブランド・イメージの向上」「パーパス具体化」の各項目で、「効果がある」または「どちらかといえば効果がある」と回答した割合は9割を超えています。この結果は、企業がこのテーマに対して長期的に価値を高める重要な取り組みであると認識していることを示しています。
■ 課題と困難
しかし、取り組みにあたっては多くの課題があることも明らかになりました。「リソース不足」が62.0%と最も多く挙げられ、次いで「具体的な事業モデルの構築が難しい」という意見が26.5%でした。また、社内外のステークホルダーの理解を得る難しさなども指摘されており、特に「社会的・環境的インパクトの測定が難しい」といった技術的な課題や、短期的な成果が求められるために中長期的な視点を持ちにくいという意見も相次ぎました。
■ 支援のニーズ
多くの企業が「社会課題解決に取り組む企業とのマッチングを促進する仕組み」を必要としています。また、事業の取り組みを広く公にするための仕組みへの要望も高く、それによって企業内部や外部とのコミュニケーションが円滑になることが期待されています。さらに、公共調達での入札優遇や民間金融機関の融資条件の改善など、公的支援に対するニーズも見受けられます。
■ 認証制度への理解
興味深いことに、公益性の高い企業向けの認証制度に関しては未だ認知度が低く、多くの企業が詳細を把握していないことがわかりました。特に「B Corp認証」など、近年注目を集める制度はほとんどの企業がその内容を把握しておらず、しっかりした情報提供が必要とされています。
結論
調査の結果からは、企業の9割以上が「事業を通じた社会課題解決」に取り組むことで長期的な成長が見込めると考えており、実際に実践している企業が一定数存在することが示されました。しかし従来のビジネスモデルとは異なる視点が求められるため、リソース不足や効果測定の難しさ、ステークホルダーとのコミュニケーションに関する課題が浮き彫りになりました。これらを乗り越えるためには、同じ志を持つ企業同士の連携、情報発信の強化、さらには制度的な支援が必要不可欠です。日本総研はこのような取り組みを支援し、企業が社会的利益を追求するための主導的な役割を果たしていく所存です。