建設業界における時間外労働上限規制:中小企業の課題とDXの必要性
2024年4月より施行された建設業界における時間外労働の上限規制。現場TECHは、この規制に対する建設業従事者202名へのアンケート調査を実施し、その実態を明らかにしました。
調査結果によると、規制の施行を認識している人は85.1%と高い一方で、制度の内容を理解している人は71.3%にとどまりました。特に、従業員数10名以下の小規模事業者では、制度への理解度が低い傾向が見られました。
規制の適用状況は、施行から2カ月が経過した2024年6月時点で、36.3%の企業が「完全に適用されている」、50.8%の企業が「部分的に適用されている」という結果に。従業員数101名以上の大企業では「完全に適用されている」割合が54.55%と高かった一方、従業員数1~10名の小規模事業者では14.81%と低く、企業規模によって大きな差が見られました。
中小企業が直面する課題
アンケートでは、従業員目線で多くの課題が浮き彫りになりました。特に、人手不足の深刻化は大きな問題として挙げられ、96名の回答者が「人手不足の深刻化」を課題として選択しました。規制により労働時間が制限されることで、既存の人員では業務をカバーしきれない状況が生まれているのです。
また、83名の回答者が「納期を遵守できない・仕事が回らなくなる」を選択しており、規制により業務のスケジュール管理が難しくなっていることがわかります。さらに、「残業手当が減る」や「仕事へのモチベーションの低下」といった経済的および精神的な影響も課題として認識されています。
DXによる効率化が必須
これらの課題を克服するためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化が不可欠です。アンケートでは、「デジタルツール・システムの導入」や「適切な工期の設定」といった回答は少なかったことから、これらの分野での改善が必要であることが明らかになりました。
DXによって、業務の効率化、人材不足の解消、労働時間の短縮、さらには安全性向上など、多岐にわたる課題解決に貢献することが期待されます。
今後の展望
今回の調査結果から、建設業界における時間外労働上限規制は、企業規模や経済力によってその適用状況に大きな差が生じていることが明らかになりました。特に、小規模事業者にとっては、規制への対応が大きな課題となっています。
今後、政府や業界団体による中小企業への支援や対策が求められるとともに、企業自身もDXへの取り組みを加速させることで、労働環境の改善と持続可能な事業運営を実現していく必要があります。