新たなウナギ種苗量産水槽の開発が生産コストを劇的に削減
国立研究開発法人水産研究・教育機構、ヤンマーホールディングス株式会社、一般社団法人マリノフォーラム21は、ウナギの種苗生産用新しい量産水槽を開発しました。この水槽は、シラスウナギを約1000尾生産することができ、従来の大型水槽と比較すると、1尾あたりの飼育コストを約20分の1に削減しました。
開発の背景
ニホンウナギは、全国で広く食される人気の食材ですが、近年では天然のウナギの採捕量が減少しており、養殖業界には大きな影響を及ぼしています。特に、天然種苗の価格高騰が問題視されており、安定した供給のためには人工種苗の大量生産が急務とされています。これを受けて、2017年度から水産庁が委託するプロジェクトがスタートし、ウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの開発が進められました。
研究の進展
新たに開発された水槽は、耐久性に優れた繊維強化プラスチック(FRP)で製作されており、アクリルや塩化ビニル製の従来の水槽よりもコストを抑えて大量生産が可能です。また、設計に関しても流体解析技術を用い、最適な水流を維持することで、より効率的な飼育が可能になりました。
開発した新水槽の特徴
この新しい量産水槽は、直径40cm、長さ150cmの蒲鉾形状で、多くのウナギ仔魚を安定して飼育できます。実際に短期飼育試験を行ったところ、小型水槽と同等以上の成長速度と生残率が確認され、これは生産技術の進化を示しています。
具体的な成果
実証実験では、1水槽あたり約1000尾のシラスウナギを生産できることが判明し、これにより飼育コストも大幅に削減され、1尾あたり約1800円になると予測されています。このように、効率の良い水槽の開発は、持続可能な養殖業の実現に向けた重要な一歩となります。
今後の展望
ウナギの大量生産には、さらなる水槽の拡大や高度化した飼育技術の導入が必要です。また、手動給餌から自動給餌への移行など、作業の効率化とコスト削減も求められています。これらの研究は、2023年度から水産庁が進めるプロジェクトで引き続き行われる予定です。
おわりに
この新たな水槽の開発は、ウナギの養殖業界において重要なマイルストーンとなります。持続可能な食文化の実現に向けて、人工種苗の安定供給が進むことが期待されます。開発に関する知見は、今後の飼育技術の革新にもつながることでしょう。