脱炭素社会を目指す長野県塩尻市の取り組みを探る
長野県塩尻市には、脱炭素社会の実現を目指す新たな取り組みが進行中です。株式会社電力シェアリングが主導する「デコ活」は、「脱炭素(Decarbonization)」と「エコ(Eco)」を掛け合わせた新しい国民運動で、国民が自発的にCO₂排出量のゼロ化を選択できるよう促すものです。
デコ活の背景と目的
環境省の委託を受けて行われるこのプロジェクトは、地域住民の行動変容を促し、自家用車の利用を控える「デコ活・ナッジ社会実証」を行っています。これは、日々の生活にエコな選択肢を取り入れることで、家庭からのCO₂排出量を削減し、2050年までのネットゼロ目標達成を目指すものです。
この取り組みでは、塩尻市の住民を対象に、公共交通機関や自転車、徒歩の利用を増やすよう促すための様々な手法が用意されています。例えば、特別にデザインされたiPhoneアプリやウェブアプリを開発し、利用者が自家用車を控えるきっかけとなるようなナッジを組み込んでいます。
市民との対話による改善
2024年7月6日には、塩尻市振興公社の主催する1周年記念イベントにて「環境」ブースを出展し、市民と直接対話を行いました。イベントでは、移動ナッジ実証や新たに開発したスマフォ・ゲームアプリ「ダブルチェックイン」の内容説明し、実用性について意見を求めました。市民からは「ナッジモデルやアプリをより使いやすくしてほしい」という声も多く寄せられました。
CO₂削減を阻む現状と地域の意識
環境省によると、家庭のCO₂排出量の約2割はマイカー利用から来ており、これをゼロにすることで2050年の目標達成につながります。しかし、実際のところ、マイカーから公共交通機関へのモーダルシフトが進まないという現実があります。市民からは「マイカーを使わないと決めても、実際に行動に移すのは難しい」という声が多く聞かれました。
高齢者や家族連れの「交通弱者」を支えたいという市民の意見も多く、地元の人々が一丸となって環境問題に取り組むための仕組みの必要性が強調されました。共助の仕組みを通じて、みんなで楽しく環境活動に参加することで、自然と行動が変わることを目指しています。
ダブルチェックイン・ゲームアプリの展望
塩尻市民との協力により開発が進んでいる「ダブルチェックイン・ゲーム」は、地域の公共交通機関の利用を促進し、さらに地域での交流を促進する試みです。利用者は、バスや鉄道を利用することでポイントが貯まり、目的地でのチェックインでもポイントが得られます。グループでの参加を促進するための仕組みも組まれており、みんなで協力する喜びが体験できます。
このアプリは、地域社会でのつながりを築くことを目的としており、生態系に優しい生活スタイルを一緒に楽しむ場として機能することが期待されています。ポイント達成での特典や、AIを活用したイベントの提案機能も検討されており、多くの市民が興味を持つ仕組みになることでしょう。
インフラと人々の意識の変革
株式会社電力シェアリングは、ナッジモデルを活用した社会実験を通じて、民間企業や地方自治体と連携し、持続可能な地域社会づくりを進めています。私たちの未来を背負う世代のために、脱炭素社会の実現を目指して一歩ずつ前進している塩尻市の活動は、他の地域にとっても大きな刺激になることでしょう。
このような試みを継続的に行うことで、未来の地域社会において、誰もが快適に移動でき、豊かな生活を享受できる環境が整っていくことを願っています。地域が主体となる持続的な取り組みの重要性を再認識し、私たちができる身近な行動を考えていくことが、これからの課題です。